ジェンダー平等の先進国で学ぶ

京都大学からの海外留学 先輩の体験談②

井上 桃子
法学部 3年生

参加プログラム交換留学
留学先大学名ウプサラ大学
留学期間2022年8月~2023年6月
(約10か月)

授業を通して多面的視点を得る

留学における目標は、ジェンダー平等の先進国といわれるスウェーデンで、政治とジェンダーについて学ぶことでした。授業を通して学んだことは3点あります。①ジェンダー平等政策の変遷、②女性の政治的・経済的自立に伴うメリットとデメリット、③現代のスウェーデン社会における課題です。

1点目についてです。’Introduction to Development Studies’, ‘Gender and Economic Development’という授業では、ジェンダー平等についての歴史的な理論の変遷を学びました。セミナーでは、学んだ理論を基に、発展途上国のジェンダー平等政策を提案するというグループワークを行いました。理論を活用して具体的な案を考えるという、政策提案の面白さを学びました。

2点目についてです。’Gender and Politics in Comparative Perspective’の授業では、女性の政治代表を巡る議論について学びました。学習の成果として、日本においては、時間・資金の不足、ステレオタイプが女性の政治進出の障壁となっていることを分析し、エッセイにまとめました。また、 ‘Gender and Economic Development’の授業では、女性の経済的自立にはメリットが多い一方、男性からの反発など、様々な懸念も存在するということを学びました。この授業では、女性の自立支援に関するドキュメンタリーを批判的に考察し、エッセイとして提出しました。

3点目についてです。スウェーデンの社会状況について広く学びたいという思いから、’The Changing Geography of Sweden’という授業を履修しました。この授業では、先住民への差別、ホームレスの問題など、スウェーデン社会における課題を学習しました。留学前は「スウェーデン=平等」というイメージを抱いていました。そのためスウェーデンの良い面だけでなく、山積する社会課題を学習できたことは大きな収穫でした。

以上のように、留学中の授業を通じ、ジェンダーに関する知見を深めることができました。また、物事のメリットとデメリットの両方を考慮に入れる必要があるという多面的視点が身に付きました。

留学先でのギャップに苦労

学業面においては、読まなければならない文献の量が多く、苦労しました。1か月の授業期間で800ページ以上のリーディングが課されたこともありました。1日に読むページ数を決めていましたが、計画通りにいかないことも多く、精神的にも体力的にもつらかったです。

生活面においては、寮の共有キッチンにストレスを感じました。使った調理器具やお皿が放置されていることが多く、寮の仲間に何度も注意しました。留学生同士でコミュニケーションを取って、ルールをしっかり共有することが重要だと思います。

また冬の寒さと暗さにも苦労しました。特に日照時間について、午後3時ごろには薄暗くなってくるため、気分が鬱々としました。ビタミンDのサプリを飲んだり、寮の仲間とできるだけ顔を合わせたりして、気分が落ち込まないように努めました。

留学全体を通しては、自分の心と体のケアを怠ってしまうことがありました。留学開始時は、モチベーションが高く、夜遅くまで文献を読んだり、様々なイベントに参加して交流を広げようとしたりしていました。しかしながら、数か月たつと、疲れているにも関わらず無理をして勉強をしたり、イベントに参加したりしている自分に気が付きました。もちろん、真剣に学業に取り組んだり、交流を広げたりすることは大事ですが、同時に、自分の時間も必要であると思います。このように、モチベーションを保つことと自分のケアをすることのバランスが難しいと常に感じていました。

自分の価値観を相対化して考えられるように

学業面以外では、国際感覚を養うことを目標としていました。この点については、他の学生との交流を通じて、価値観の違いを素直に受け入れることができるようになったと思います。例えば私は、スウェーデンのコンビニが早く閉まることに対して、不便だと感じていました。しかしながら、スウェーデン人やフランス人の友人は、ワークライフバランスが取れていることの証拠だとして、このことを好意的に受け止めていました。このように、他の学生の意見を聞くことで、自分の価値観を相対化して考えることができるようになりました。

これから留学する人へのメッセージ

アドバイスは2つあります。1つ目は、留学の目的を見失わないようにすることです。留学中には、学業・生活面ともにモチベーションが下がることがあると思います。そのような時にこそ、留学で得たいことを振り返ることで、有意義な時間を過ごそうという気持ちが自然と高まってくると思います。2つ目は、留学に向けての準備を怠らないことです。奨学金など、時間を要する準備が多いですが、この努力は、自分の自信に繋がります。また、準備の中で、可能な限り同じ大学に留学していた先輩と連絡を取ることも大事です。アドバイスを受けられることはもちろん、頼れる人がいることで、安心して留学生活を送ることができると思います。

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