国際高等教育院のポリシー、ミッション

京都大学では、各学部がそれぞれの学士課程について一貫して責任をもつ体制(4年一貫教育)をとり、1回生から4回生まで、専門教育と教養・共通教育を並列して展開するカリキュラムを編成しています。このうち、国際高等教育院(以下、「教育院」と言う。)は、各学部の学士課程の編成方針に基づき、教養科目及び外国語や専門基礎科目といった各学士課程に共通する科目の企画及び実施を担当します。

教養・共通教育について本学では、次の二つの役割に注目しています。

一つ目は、学生一人ひとりが、高校までの他律的学習から、大学での自律的学習へと円滑に移行するための指針としての役割です。外国語や専門基礎科目は専門教育の土台として必須ですが、それらを単に道具と見なせば、その習得は無味乾燥なものでしかありません。学びを通して、考えることの楽しさの享受へ、さらには永い思索によって築かれた学の体系の眺望へと導くことが重要と考えています。

二つ目は、学生が自ら知的世界を広げようとするとき、その介添としての役割です。大学入学前には見えなかった各自の眼前に広がる広大な知的空間を可視化し、自分がその中でどの領域に踏み込もうとしているのか、またそこは他の領域とどのように連関するのかについての理解を深化させ、知的存在としての各自の人生のより良い選択を補助することが必要と考えています。

教育院では、以上のような役割を担う教養・共通教育を企画・実施するため、各学部から教育院に教員が移籍して企画評価専門委員会を構成し、各学部の学士課程の編成方針を基礎として開講科目、授業内容・方法、成績評価、担当者等、あるべき教養・共通教育の内容に関する検討を行っています。教育の実施にあたっては広く全学の協力を得ます。さらに本学のすべての学部長と独立研究科及び研究所等の代表が参画する協議会を組織し、教育の企画内容と実施状況および教育院の組織運営の監督をおこなうことで、全学として教養・共通教育に関する責任を担う体制をとっています。

教育院は2013年に設立され、本学における教養・共通教育のあるべき姿をあらためて議論した結果に基づき、2016年度に新たな科目編成による教育実施体制をスタートさせました。英語科目や留学生向け日本語・日本文化科目の整備・充実、交換留学生の受入、京都大学独自の学部留学生受入プログラムの設計と実施など、本学の教育の国際化における主導的な役割も担っています。さらに21世紀の基礎教養として重要性が高まるデータ科学について、その基盤を形成する教育の体系づくりと実践にも取り組んでいます。

めまぐるしく社会が変化しつつある現代、変わらない価値を持ち続けるものがある一方で、変化に合わせてあらためなければいけない課題も出てくるでしょう。2020年に突然世界をおそったコロナ禍はリモートオンライン授業を取り入れざるを得ない状況を生み出しましたが、一方でネットワーク技術の進展を多くの教員が実感することで授業のあり方を再考させる機会となったのも事実です。教育院は今後も不断の見直しを行いつつ、本学における教養・共通教育をさらに充実させていきたいと考えています。