地域を究める 2009年度

 このゼミのねらいは、現在、日本の地域が抱える諸問題や、各地での地域づくりの取り組みを学ぶことで、持続可能な地域、日本、世界のあり方を考えてみるところにあります。とくに、アメリカに端を発したグローバルな規模での経済危機は、日本の都市や農村に大きな影響を与えています。他方で、地球環境問題やエネルギー問題、食料問題といった長期的で、人間の生存条件そのものに関わる問題も横たわっており、ひとことで持続可能な世界をつくるといっても、そう簡単なことではありません。このゼミは、世界や日本をつくる基礎細胞ともいえる人間の生活に最も近い「地域経済」の仕組みと、それを再構築するための具体的な取り組みについて学んでいこうというものです。
 ゼミ生は、6人で、経済学部生3人のほか、法学部生2人、工学部生1人です。出身地も、東京都、大阪府、兵庫県、滋賀県、石川県と、多彩です。
 ゼミでは、まず、地域経済の仕組みや現状、地域開発や地域づくりの実例をテキストで勉強し、2人ずつペアになって毎回分担報告し、それをもとに議論することからはじまります。大学に入ってはじめてゼミでの報告の仕方を学びますので、最初は戸惑う人も当然います。私の方から簡単にレクチャをして、レジュメのつくり方を教えます。回を追って、レジュメの作り方は、ワープロソフトの技法も含め目に見えて上達していきます。ゼミの司会の仕事も、学生自身がやります。なんといっても、ゼミの主人公は、学生自身であるからです。教員の役割は、学生の皆さんの学習や討論をサポートする黒子役だと考えています。
 先日は、関西新空港のプロジェクトについて検討しました。「なぜ、関西に3つも空港ができたのか」「なぜ海上埋立空港になったのか」「関西新空港は、どうして経営がうまくいかないのか」「りんくうタウン開発は、なぜ失敗したのか」「大阪府や泉佐野市の財政はどうして破綻したのか」など、次から次へと疑問が出され、時間がすぐに経ってしまいました。出身地や学部の違いもあって、鋭く、面白い意見が続出し、楽しい議論ができます。結局、時間が足りないということで、弁当もちこみで、30~40分延長ということも。
 テキストの勉強をしながら、学期末をめざして、各人が自分の調べたい地域とテーマを選び、レポートづくりをしていきます。市町村合併問題から、大都市の再開発や財政危機問題まで、幅広い分野にわたって、ある特定の地域を深く掘り下げて調査、研究しますので、教員の私にとっても大変勉強になります。どんなユニークなレポートが出てくるのか、楽しみです。

岡田知弘教授

経済学研究科
専門分野:地域経済論