地盤の科学入門 2010年度

 このポケットゼミは1998年以来、地盤力学研究室を中心に地盤系の研究室のスタッフで担当してきました。土の力学の難しさは、工学的応用のみでなく、物性そのものを研究する必要があるわけで理学的な側面があります。地盤の科学は砂や粘土など土や柔らかい岩を対象としていますが、応用のみでなく、基礎的な地盤の挙動を含んでいます。学生には、地盤の工学的な取り扱いのみでなく、粉体や粒状体の力学など広がりのある問題に接する機会としての地盤の科学に触れてほしいと思います。以下取り上げている話題について紹介しましょう。

 (1)地震時の被害の原因の1つである地盤の液状化です。地盤の液状化とは普段は地下水を含んでも固体状でしっかりした砂地盤が、地震などによって力を受けると、地盤が液体状になる現象で、1995年に起こった兵庫県南部地震では、神戸市の沖合に建設された埋立地(ポートアイランド)で大規模な液状化現象が発生しました。液状化はその結果生じる墳砂、すなわち水と砂が混ざり合って地表に噴き出ること、また出た砂を見ることによって発生したことがわかります。ポートアイランドでは、埋立地の約半分が、水と土砂のまざった泥水でおおわれました。ゼミでは、水槽中の水で飽和した砂の中にフイルムケースをいれておき、振動させることによって浮き上がる簡単な実験などの実験を行い、液状化を学生自身に体験してもらいます。

 (2)2つ目のテーマは新しいエネルギ源である地盤中のメタンハイドレート(MH)に関する話です。メタンガスは、温度が低く圧力が高いと、たとえば温度が摂氏5度で5MPaなどではシャーベットのようなハイドレート(水和)状態で存在します。低温・高圧条件下で、水分子がメタン分子を取り込み、籠状構造を形成したもので、主に海底地盤、永久凍土下に存在しており、世界の海底下やカナダやロシアの寒冷地の地下に存在します。バイカル湖の湖底などから引き上げられた試料には、白色のMHの含有が観察されています。日本では南海トラフ、新潟沖やオホーツク海底下などにあります。現在このメタンハイドレートからメタンガスを生産するための研究や、MHの物性や自然分解の研究が行われています。地盤中に存在するMHが分解すると地盤の沈下や海底すべりなどの変形破壊が発生する可能性があるため、MHに関する環境への影響を明らかにする必要があるわけです。

 ゼミでは最新のデータなどを材料に環境への影響やエネルギとして使用する場合の問題点を検討しています。その他、トンネルの堀り方、地下水のくみ上げによる地盤沈下問題や地盤の化学的汚染問題も取り上げています。工学研究科の桂キャンパス移転で研究室が桂に移ったので、吉田キャンパスだけでなく桂キャンパスでもゼミを行っています。また、夏休みには現場見学も行っています。

複数名で行います

工学研究科
岡二三生教授     専門分野:地盤力学
木元小百合准教授  専門分野:地盤力学
肥後陽介助教     専門分野:地盤工学

地球環境学堂
勝見武教授   専門分野:地盤環境工学
乾徹准教授   専門分野:地盤環境工学