ゼミナール「活動する宇宙」 2010年度

■ポケゼミのあらまし
 本ポケゼミでは、テキスト「活動する宇宙」(裳華房、1997年)および「宇宙生物学入門」(シュプリンガー、2008年)を半年かけて輪講し、夏休みに飛騨天文台で2泊3日の合宿ゼミを行なっている。テキスト「活動する宇宙」は、20世紀後半に明らかになった宇宙・天体の激しい活動現象を身近な太陽から100億光年先のクェーサーや宇宙ジェットに至るまで、丁寧に解説した本であり、基礎から始めて学問の最先端まで触れることができる。また、テキスト「宇宙生物学入門」は、天文学、地球物理学、生物学の基礎から、惑星、生命、文明の起源を論じた好著であり、今年からゼミのテキストに追加した。ゼミには、毎年さまざまな学部から8名前後が参加する。毎週、1人の学生が1つの章を担当し、内容をレジメにまとめ、1時間ほどかけて自分の理解を述べる。その後、教員が詳しい解説をする。

■テキストは難しい
 元々これらのテキストは学部の3、4回生や大学院生向けに書かれているので、大学に入りたての1回生には、かなり難しい。しかし、それを承知でテキストに採用したのには理由がある。京大に入る学生がいかに優秀といえども、高校までは手取り足取りの教育しか受けていない。答えのわかっていない問題や予備知識が十分与えられていない教科書や授業は受けたことがない。しかし、大学とはそもそも答えがわかっていない問題を研究するところなのだ。講義や実習も予備知識が親切に与えられるとは限らない。そのような状況でいかに答えを見出し、問題を解決するか、それを学ぶのが大学である。高校や予備校のように教材もヒントもすべて与えられた上での学習ではなしに、右も左もわからない状況の中で、手探りで教材やヒントを自分で探しながら勉強することが要求される。それを大学に入りたての1回生から学んでもらいたい。そういう思いから、1回生には難しいテキストを選んだ。もちろん、担当教員がいくらでも解説や補足ができるゼミ形式ならではの選択である。そして、確かに難しいのだが、毎年、学生は必死にくらいついてくる。文系(文学部や経済学部など)の学生もいるが、和気あいあいと、共に天文学を学んでいる。ゼミでは、途中から担当教員によるスライドショーが始まったり、二人の教員による研究談義が始まったりする。これも学生には楽しみのようだ。テキストは単なる触媒に過ぎない。

■夏の飛騨天文台合宿
 夏の飛騨天文台合宿は、学生にとって最も楽しい経験だ。飛騨天文台の最先端の望遠鏡や設備を見学し、天気が良ければ、太陽や星の観望もできる。運が良ければ、満天の星空に堂々たる天の川を見つけ感動して涙する女子学生もいたりする。合宿ではゼミ発表も重要行事。各人が自分の興味で自由に選んだ宇宙関係の話題の自由研究発表をやる。テキストでは扱わなかった初期宇宙や、宇宙人にまで話が及ぶことがある。食事はすべて自炊。夕食は毎回コンパ状態と化す。半年間同じゼミに出席していたのに、合宿のとき初めて親密に言葉を交わす学生達もいる。合宿とはそういう人と人との交流の場なのかもしれない。

複数名で行います

嶺重慎教授
理学研究科宇宙物理学教室
専門分野:宇宙物理学

柴田一成教授
理学研究科附属天文台
専門分野:太陽宇宙プラズマ物理学