宇宙の観測400年の歴史 2015年度

100年も前から研究に使われているザートリウス望遠鏡を、花山天文台で見学する2014年のゼミ生

 京大では、名古屋大学・国立天文台が南アフリカ天文台に設置した赤外線望遠鏡IRSFを使って、私達の銀河系の磁場構造を見通す赤外線偏光観測、マゼラン銀河で生まれつつある星の分布をさぐる探査観測、銀河系中心部の大質量ブラックホールのモニター観測をはじめ、さまざまな研究をしています。

 南アフリカのケープタウンは大英帝国が築いた要衝の地、1820年には王立天文台が設立され、数々の天文学上の発見がなされてきました。南アフリカ天文台で私たちと共同研究をしてきた赤外線天文学の大家が、アイルランド出身のイアン・グラス博士です。彼の書いた「Revolutionaries of the Cosmos」は、ガリレオ、ニュートン、ハーシェル、ハギンズ、ヘール、エディントン、シャプレー、ハッブルという「宇宙物理学者」8人の生涯をたどったもので、特別な天文学の予備知識など必要なく、読んでいくことができます。先年も「なんでケプラーが入ってないねん?と言われたよ」とおっしゃっていましたし、わりあい事実を淡々と述べているのが物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、いろいろなことをネットで調べて補ったりしながら、宇宙物理学を確立していった8人の天才たちの研究者人生に触れたいと思います。

 ゼミでは、2人か3人を選び、その発明や発見を通して20世紀前半までの宇宙物理学の発展を見ていきます。せっかく高校まで6年も英語「を」勉強してきたので、その得意不得意にかかわらず、大学へ入ったところで学部の壁を越えて、英語「で」科学者の伝記を読んでみましょう。多少の誤訳には目をつぶり、よく分からないところはすっ飛ばしつつ、時代の雰囲気を味わいたいと思います。さらに可能であれば、21世紀最先端の観測的研究について自由に調べてきて発表しましょう。赤外線をはじめとする可視光以外の電磁波も使って、宇宙のダイナミックな姿を明らかにしていくのが現代の天文学です。京都大学理学研究科でも、可視光と赤外線をとらえる口径3.8mの新技術望遠鏡の計画を進めています。

 7月には、理学部の附属天文台(花山天文台)にある由緒ある望遠鏡の実物を見に行くことを考えています。

長田 哲也

理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻(宇宙物理学教室)/教授
1957年 兵庫県神戸市
専門分野:赤外線天文学
趣  味:週に1度の水泳、ハイドン等の音楽を聴くこと

※左の写真は赤外線(波長1.2マイクロメートル)で撮影