医学のための数学基礎(フリーソフトRで学ぶ) 2015年度

 理科の4科目を物理学・化学・生物学・地学と並べたときに、数学が最も活躍したのは物理学だったのはそれほど古いことではないです。しかしながら、生物学がデータサイエンスと結びついた今、複雑で多様な生命現象の理解には数学的なアプローチが非常に重要となっています。そしてこのゼミの担当教員は「数学が好きな人が、今、一番取り組んでほしい理科が生物学とそれを含む医学だ」と思っています。
 では、数学科に進んで数学を修めてから生命科学を学べばよいかと言うと、そうするのも一つのやり方ではあるでしょうが、誰もがそうするのがよいとも思えません。このゼミでは、数学を体系的に学ぶのではなく、世の中には、どんな数学があるのかを興味の湧くままに覗き見し、それを医学・生命科学と結びつけてみます。その活動を通じて、ポケゼミが終わっても、医学・生命科学と数学との両方を学び続けて行くための、動機づけができて、そのための基礎体力を身につけてくれればと思っています。

 このゼミで覗いて見る内容は、参加者が自由に決めていく方針にしていますが、ある程度予想している内容としては、数学的な用語で言えば、<複素数 四元数>、<曲線 曲面 トポロジー>、<代数 群 環 体>、<離散数学 グラフ理論 組み合わせ論 素数>、<スカラー ベクトル テンソル>、などがあります。どれを取っても生命現象とのつながりが面白いですし、変わったところでは、<組織形成 双曲幾何 鉤針編み>、<外科的糸結び 結び目理論>、<脊椎骨サイズ 卵の形 共形変換>などの関係もあります。聞きなれない単語がたくさん出てきたかもしれませんが、ゼミの担当教員も過去5年間、必要に迫られて調べものをしただけで、このゼミを通じて理解を深めようと思っているくらいですから、全く問題ありません。

 また、このゼミではフリーソフトのRというものも使います。コンピュータに慣れることを目的としますし、また、数学をより楽しむために、面倒な計算は機械に任せるという意図でもありますから、医学・生命科学が好きで数学も好きだけれどコンピュータはゼロ、という人でも大丈夫です。

山田 亮

所属・職名/医学研究科 統計遺伝学分野 教授
数理解析研究所 数学連携センター 特任教授
生年/1968年
出身地/山口県
専門分野/統計遺伝学
趣味/バドミントン