動物のかたち作りを探る 2007年度

 高校の生物教育ではウニとカエルの正常発生に加えて、カエルではオーガナーザーによる一次胚誘導や割球の分離などを例に、発生のしくみについても学びました。大学ではこの発生のしくみを別の視点で学ぶことにより、動物のかたちがどのようにできてくるかをより深く理解することができます。
 使用している教科書は、高校を卒業したばかりの1回生には少し難しいS.F.GilbertのDevelopmental Biology(発生生物学)です。この中の両生類とショウジョウバエの発生について、聞き慣れない専門用語に苦労しながら一人一回レポーターを担当しています。高校の生物では単に誘導という言葉で済ませてしまう内容でも、大学ではWnt signaling、TGF-beta signaling、BMP signalingなど分泌タンパクと受容体および阻害因子の相互作用としてとらえます。さらに転写調節因子による遺伝子発現の調節を学ぶことにより、動物のかたち作りの概念をおぼろげながらも身に付け、生物学に対する見方が変わることを目標にしています。
 ポケゼミを電子顕微鏡室で行っていますので、ゼミ形式に加えて、実際に動物のかたちを見るために手も動かします。具体的には、夏休みの1-2日を使って、透過型電子顕微鏡による微細構造の観察、走査型電子顕微鏡による表面微細構造の観察、パラフィンに埋めたおたまじゃくしの切片製作など、普段経験できないことにも挑戦します。
 今年は理学部生が一人も受講しておらず、医学部や農学部の学生に加えて経済学部の学生も受講しています。文科系の学生であっても生物に対する興味のある人の参加を期待しています。

久保田洋准教授

理学研究科
専門分野:発生生物学