新規医療開発の方法と道筋 2007年度

■大学附属病院の使命としての新規医療開発
 大学・医学部の附属病院は、総合的・標準的で質の高い医療を提供するとともに、医師、医療人を養成・教育する場となっています。これに加えて、京都大学医学部附属病院はその使命の一つとして、「新しい医療の開発と実践を通じて社会に貢献する。」ことを基本理念として掲げています。
 一方、研究大学である京都大学では、分子生物学、遺伝子科学、発生工学、材料工学、などの基礎科学分野において、医療への応用可能性を持った多くの世界最先端の研究成果が日々得られています。これらの研究成果を新しい医療(医薬品、診断・治療の方法、医療機器)へと展開・転換していくことは、まさにこの基本理念に合致するものとして附属病院に求められているものと考えられます。

■探索医療センターの活動紹介と新規医療開発における諸問題
 附属病院探索医療センターは、基礎研究成果の新しい医療への展開・転換を効率的に行うシステムを構築するために設立されたものです。このゼミの前半では、主に京都大学医学部、附属病院、ことに探索医療センター現在進行中の新規医療開発の実例をベースに、新しい医療を効率的に開発していくための道筋・方法について概説して、受講者の理解を深めるようにしています。新規の医薬品や技術を初めてヒトに適用することがもつ諸問題、例えば、科学的妥当性のほか、安全性の確保、患者さん等の対象者の権利の尊重、法的規制などについても概説し、問題提起を行います。

■受講者の積極的参加による討論
 本ゼミの受講者としては、将来、医療、医学研究、医薬開発の現場に携わる可能性の有無に関わらず、新しい医療が作られていく過程に興味や疑問を持ち、積極的に討議に参加してくれる人を求めています。従って比較的様々な分野に進む予定の学生が集まっています。前半で担当教員が概説したことを踏まえ、後半では、各受講者が興味を持っている新医療をテーマとして調べた結果を順次発表して、自らの考えを述べ、それに基づいて参加者全員が、それぞれの立場から意見を述べ合います。効果や安全性が確立されていない新規医療を自分が世界で初めて受けるかどうかの選択を迫られたらどうするか、など様々な考え方があるテーマについて、若く柔軟な発想で議論することで教員を含め相互に刺激し合え、多くの新鮮な考え方に出会えるゼミだろうと思います。

清水章教授

医学部附属病院
専門分野:探索医療開発学,分子免疫学