社会思想史ゼミナール 2006年度

■何をしているのか?
 「経済学部の教員が担当するゼミだから、お金や企業の話だろう」という予測を裏切るのかもしれませんが、このゼミでは、人間とは何か? 人間はなぜ社会(集団)を形成するのか? 人間はなぜ学ぶのか? 自分らしさとは何か? 経済活動は人間や社会にどのような影響を与えるのか?などの、2500年以上前から変わらない素朴な問いを、複数の書籍(小説も使います)やゼミでの議論を参考にしながら、一緒に考えを深めていきます。
 2004年度は、社会と個人との関係について、「学ぶ」ことや「読書する」ことと関連付けながら考察しました。2006年度は、社会(所属集団)との関係から自分自身のイメージ形成を考えています。もちろん多くの人にとって、普段の生活で、「自分とは誰か?」を意識することは余りないと思いますが、海外旅行や外国生活を送ると、この問いを突きつけられることがしばしばあります。国際化時代を生きる皆さんにとっては、避けて通れない問いということもあり、多様な学部所属(文、総人、教、工)の5名の参加者全員が、これまでの自分の人生経験や読書体験を基にしながら、非常に面白い議論を展開しています。議論が終わらずに、そのまま一緒に昼食をとりながら話を続けるときもあります。

■何を目指しているのか?
 このゼミの準備や参加を通して皆さんに目指して欲しいことは次のようなことです。それは、「暗記しては吐き出す」受験型勉強から「思考力を鍛える」学習スタイルへの移行、そして、「ひとりでがんばる」だけの孤独な勉強ではなく「まず一人で考えてみて、その結果について他者と議論をしながら、また考える」という共同作業を含む思考様式の習慣化です。以上のことができるようになると、みなさんの大学生活が、より豊かに楽しくなるのではないでしょうか。このきっかけが、本ゼミナールでの学習や人間関係によって得られることを願っています。

■多様で個性的な人物との出会いの場を目指して
 ポケット・ゼミは少人数ですから、大講義とは違って、教員との人間関係は作りやすいと思います。しかしゼミとは、教員との関係だけでなく、新入生である皆さん同士の豊かな人間関係をはぐくむ場でもあるべきだと思っていますので、ゼミでの議論も、参加者同士の相互理解が進むように工夫をしています。それが成功しているのか、04年度の参加者たちは、ゼミ終了後も、様々な場で「ミニ・同窓会」をしているようですし、それぞれ成長した顔つきで、相談や雑談のために今でも研究室を訪れてくれます。私にとって非常に楽しいひとときです。

■まずは紅茶でも飲みながら…
 とはいえ、誰でも未知の人間関係を作るときや難しいテーマについて話し合うときは、必要以上に身構えたりしてしまうことがあります。しかし緊張していては、議論も人間関係も楽しくなりません。ですから、まずは、紅茶を飲みながらリラックスして、ゆったりと落ち着いた気持ちになってから、ゼミでの議論を開始します。時には脱線して、担当者の「どたばた英国留学記」や、京都に関するトリビアも聞けるかもしれません。
 所属学部の枠にとらわれずに、積極的に学ぶ気持ちを持つ新入生の参加を期待しています。

竹澤祐丈助教授

経済学研究科
専門分野:社会思想史、英国社会論