現地へ行ってこそ初めて学べることがある

京都大学からの海外留学 先輩の体験談①

佐藤 匠
理学部 3年生

参加プログラム交換留学
留学先大学名テキサス大学オースティン校
留学期間2022年8月~2022年12月
(約4か月)

夢だった宇宙研究の本場で学ぶ

宇宙研究の本場である米国テキサス州で宇宙のことを学びたいと考え、天文学専攻の学部生として大学の講義を受講しました。受講した講義は「天文学入門」、「地球外生命の探索」、「発話科学」、「電子音・電子音楽基礎論」の4つです。

天文学入門では、地球から遠く離れた天体について学びました。恒星や銀河、ブラックホールに至るまで、天文学の歴史を踏まえながら宇宙物理学としても少し踏み込んだ内容を扱う講義でした。私の京都大学での専門は地球惑星科学で、太陽系など地球の周囲の宇宙空間を勉強することが多かったのですが、この天文学入門では宇宙の全く異なる側面を学ぶことができました。

「地球外生命の探索」では、最先端の研究分野として注目を集めつつある「宇宙生物学」について学びました。地球外生命体の存在可能性について学際的に吟味することを目的とした講義であり、宇宙全体を知るための天文学、生命活動を理解するための生物学、住みよい惑星環境の条件を吟味する地学、これら全ての基盤となる物理学などの知識を駆使する必要がありました。

発話科学では、人間の発話プロセスについて健康科学の側面から学びました。呼吸器、循環器、神経や脳の働きを総合的に学び、時に脳波測定技術やAIの話題に触れながら、発話障害の治療法と治療技術を理解することを目指す講義でした。また音声のスペクトルを解析して形成音の周波数を特定する実習や、論文の読み方講座など、実践的な授業もありました。

電子音・電子音楽基礎論では、今日の音楽シーンを支えているデジタルサウンドの理論を学びました。芸術学部音楽院が開講する講義であり、総合大学に芸術学部を有するアメリカならではのクリエイティブな講義でした。音声がデジタル化した20世紀中期の磁気テープ技術からシンセサイザーに至るまで、実際に3分程度の音楽作品を課題として作りながら学んでいく実践的な授業でした。

数々の困難と対峙

留学中は最初から最後まで困難の連続でした。まず初日にオースティンへ到着し、そこからバスで寮まで向かったのですが、知らない街のバスにいきなり乗ったため自分が今何番目の停車場にいるのかわからず、停車場を乗り過ごしてしまいました。幸い同じバスに乗っていた親切な学生が助けてくれましたが、その日はあいにくのスコールだったため、寮に着く頃には全身ずぶ濡れになってしまいました。入寮手続きを済ませて冷えた体を温めるためシャワーを浴びたのですが、まだ寮の給湯器が十分に作動しておらず、お湯が出ませんでした。その日はベッドシーツの持ち合わせがなかったので、マットレスだけのベッドで眠りにつきました。このような初日を過ごしたためか、到着後しばらくして風邪をひいてしまいました。アメリカでは日本と違い気軽に病院にかかれないので、日本から持参した薬や現地薬局の不味いトローチで耐えました。

宇宙開発に対する現地学生の意識に驚き

当初の目標は、大学院進学を視野に入れつつアメリカ生活の感覚を掴むことでした。実際に行って暮らしてみることで、日本から見えるアメリカとは全く違った一面に気づくことができました。特に自分の夢でもあった宇宙開発については、アメリカ国内の学生の間でそれほど人気があるわけではないことを感じました。日本のニュースで聞くアメリカの輝かしい宇宙研究と現地学生の意識とのギャップには驚かされましたが、それもアメリカへ行って人と話して初めて学べることでした。

これから留学する人へのメッセージ

アメリカでもキャンパス内は日本と同じくらいに安全で、食堂の席取りにカバンを放置する学生もいるほどでした。一方でダウンタウンの様子は日本とは全く違っていて、あまり穏やかでない雰囲気のブロックもありました。これから留学する人は、コロナ禍の影響等で街の治安が普段よりも悪化している場合があることに注意してほしいと思います。私の場合は、安全な道や避けるべき場所について現地の人に直接尋ねて教えてもらいました。また、留学先大学のマークが入った帽子やTシャツ、缶バッヂをつけていると「観光客感」が無くなって狙われにくくなる感覚がありました。その代わり他人から現地の学生だと思われるので、いきなり道を聞かれたり、店員さんの話すスピードに手加減が無くなったりします。さまざまなことに巻き込まれながら、アメリカの社会問題に当事者として触れられたのは貴重な経験でした。

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