多くの人に支えられながら過ごした貴重な時間

京都大学からの海外留学 先輩の体験談②

矢野 日和子
農学部 3年生

参加プログラム交換留学
留学先大学名アイルランド国立大学
ダブリン校
留学期間2021年9月~2022年5月
(約8か月)

学問だけでなく文化への理解も深めた留学

私は3年生の9月から2学期間、アイルランド国立大学ダブリン校で交換留学を経験しました。京都大学の講義を通じて、EUの食料流通と農業の環境負荷に関心を持ち、アイルランドへの留学を志しました。現地では、京都大学での農学専攻と同じく、農学部で学びました。私は1学期につき農学部の授業を4科目と英語の講義を1科目、そして冬季休暇に社会起業についての集中講義を履修しました。

農学部での履修科目は、税制、ビジネス、経済、政治、イノベーションなど多岐に渡ります。予定の科目を履修できなかったため、羊肉の生産や森林の授業を受講しました。これらの科目は京都大学で学んだことがなかったため、授業についていくのに苦労しましたが、新しい分野を学ぶことができ満足しています。特に、フィールドワークで大学附属の牧場を訪れる機会にも恵まれ、畜産分野の最新の研究に触れることができました。最も印象に残っている授業として、EUの共通農業政策についての授業があります。講義では政策を学び、政策の効果を検証・立案するグループ課題が与えられました。政策の検証をした論文や資料を多数読み込み、グループ内での話し合いを重ねる中で、政策の分析に必要な視点を知ることができました。

学問的な学習だけでなく、文化についても学ぶことができました。アイルランドの文化はキリスト教の影響を強く受けており、特にアイルランドにキリスト教を広めた聖人、聖パトリックの命日は「聖パトリックの祝日」として現在まで覚えられています。聖パトリックの祝日には、ダブリン市内で盛大なパレードが行われました。留学先の大学はカトリックの大学として設立されたことから、大学専属の司祭と宣教師がおり、大学構内の礼拝堂で毎日礼拝が行われていました。大学は国際色豊かで、様々な文化や宗教的背景を持つ学生が集まっていました。言語や文化について学ぶと同時に、日本語や日本文化を客観的に見ることができるようになりました。

仲間たちとの充実した日々

留学中は、大学構内のアパートメントに滞在しました。大学の敷地内に主に留学生向けに住まいが用意されており、5人のハウスメイトとキッチンをシェアしながら生活しました。共同生活のなかで文化の違いに戸惑うこともありましたが、互いの言語や文化について多くの気づきを得ることができました。私の滞在したアパートメントではキッチンを共有していたため、ホームパーティーなどを行い、親睦を深めることができました。日本食に関心を持つ友人がいたため、私は現地のスーパーマーケットやアジアマーケットを活用し、日本の食事を振る舞うこともました。巻き寿司の他、味噌汁、もちなどの作り方を共有し、目新しい体験に喜んでもらうことができました。

学業の他には、クラブ・サークル活動が盛んに行われていました。留学生も積極的に参加しており、学部を超えた交流が生まれていました。こうした課外活動を通してできた友人とは、今でも連絡が続いています。日本人の友人がいない環境でしたが、両大学のサポート、ハウスメイトや友人に支えられ不便や不安を感じることはありませんでした。

現地学生が圧倒的に多かった農学部

アイルランドの第一公用語はゲール語とされており、標識や公式書類に併記がありますが、日常生活では一般的に英語が使われています。ただし、アイルランドの英語は、アメリカ英語に比べ早口で発音に若干の違いがあり、聞き取りに苦労しました。

次に、農学部では留学生数が他学部より圧倒的に少なく、クラスの中に留学生は私一人という状況も少なくありませんでした。京都大学とは異なる環境で学ぼうとあえて日本人の少なそうな留学先を選んだため、大学内で日本人学生に出会わなかったことは想定内でした。しかし全学生の30%がアイルランド国外出身という国際的な大学において、農学部での留学生の少なさには驚きました。オンライン講義も併用されていたこともあり、クラスメイトとの会話の糸口が見つからず、心細く感じることもありました。一方、現地学生が大半は農家出身で、農業について豊富な知識と経験を持っています。グループ課題が課された科目では、課題に取り組むにあたってグループ内で話し合いを重ねることが必要となりました。その過程で理解を深め、農家出身の学生ならではの観点を知ることができました。

これから留学する人へのメッセージ

日本とは全く異なる環境に飛び込み、現地の学生とともに学んだことは、かけがえのない経験になりました。世界中から来た学生や教職員との交わり、現地での生活の中で、日本では経験できないことがたくさんありました。

新型コロナウイルスの流行もあり、授業の一部がオンラインで行われるなど、通常とは違う様式の面もありましたが、国際教育交流課、農学部教務掛及び先生方には多大なご支援をいただき、無事に留学を終えることができました。京都大学には、短期及び長期で海外留学に挑戦できるプログラム、相談に乗ってくれる先生方、そして国際教育交流課が用意されています。語学要件、ビサ手続きなど大変なこともありますが、留学に挑戦してみたいという気持ちを強く持って準備することをおすすめします。

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