アラビア語紹介
Q&Aアラビア語初級カリキュラムの解説
<目標>
アラビア語部会では、以下の3項目をカリキュラムの目標として設定しています。
<能力>
①から③の目標に到達するために必要な能力を次のように定めています。
<課題等>
前述の能力に到達するために、以下のような学習を行います。
| 予習 | 教科書の新出単語を調べ、文法事項の説明を熟読する。宿題があれば済ませ、疑問点などを整理しておく。 |
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| 授業中 | 発音練習、聞き取り練習、会話、作文などに集中して取り組む。教科書に掲載されていないアラビア語関連の豆知識や、随時紹介されるアラブ・イスラーム文化圏の文化、社会、歴史、宗教、習慣、地域事情などの事柄に関心を寄せ、必要に応じてメモを取る。 |
| 復習 | 単語や練習問題などを復習してアラビア語に関する知識の定着を図るとともに、授業中に紹介されたアラブ・イスラーム文化圏に関する書籍・論文やビデオ教材などを適宜確認し、文化面の学習に役立てる。 |
アラビア語初級カリキュラムの見取り図
アラビア語紹介
アラビア語は、東はインド洋から西は大西洋まで広がるアラビア語圏で広く使用されている言語です。現在、アラビア語が話されている国の数は20以上におよび、さらにその周辺諸国においても文化的影響力のある言語であり続けてきました。
話者数については、3億3千万人を超えるとされており、英語、中国語、ヒンディー/ウルドゥー語、スペイン語に次ぐ第5位の話者数であると推計されています。
アラビア語は、1973年(オイルショックの年)に国連の公用語に制定されました。その記念日である12月18日は、2012年にユネスコの「世界アラビア語デー」とされ、各地で詩の朗読やスピーチ・コンテストなど、様々なイベントが開催されています。
アラビア語の特徴として挙げられるのが、イスラームの言語として学ばれてきたという点です。イスラームの聖典『クルアーン』は、アラビア語で下った啓示を書き留めたものとされており、アラビア語はイスラームの宗教の言語として重要視されてきました。そのため、イスラーム諸学の一分野としてアラビア語の文法学が発達し、それが古典アラビア語として現在でもアラビア語圏のみならず世界のムスリムの間で学ばれています。
アラビア語のもう一つの重要な特徴として挙げられるのが、ダイグロシアでしょう。ダイグロシアとは、一つの言語の変種が、機能的・社会的に上位・下位にランク付けされ、使い分けられている状態を指します。簡単に言うと、書き言葉と話し言葉が乖離している状態です。
アラビア語の書き言葉は「フスハー」と呼ばれ、おおむね上述の古典アラビア語および「現代標準アラビア語(Modern Standard Arabic、MSA)」を指します。現代標準アラビア語とは、古典アラビア語を基に文法を簡略化したり近代的な語彙を入れたりして、共通語として整備された言語で、アラビア語圏共通の文語として機能しています。公の場で話されるアラビア語は基本的にはこのフスハーですので、完全に文語としてのみ機能しているわけではなく、会話に使う場面もあります。京都大学のアラビア語コースで学ぶのは、この「現代標準アラビア語」です。なお、現代標準アラビア語と古典アラビア語はそれほど大きく違わないので、現代のアラビア語のフスハーを学べば、文書史料も読めるようになります。
一方、話し言葉のアラビア語は、「アーンミーヤ(主としてエジプト、東アラブ)」あるいは「ダーリジャ(マグリブ)」などと呼ばれ、各国の方言として日常生活で使われています。アラビア語の母語話者は、書き言葉と話し言葉を使い分けて暮らしています。ちょうど、関西出身の人が、家族や友達とは関西弁で話すけれども、目上の人に向けて、あるいは公の場で話す時は標準的な日本語を使う、レポートを書く時には方言を使わず標準語で書く、といった使い分けに例えるとわかりやすいでしょうか。なお、フスハーを学んでいれば、方言の習得は比較的容易とされています。
アラビア語が話されている地域は、上述のように広大な地域にわたります。そのため、アラビア語圏は気候風土も多様ですし、そこに暮らす人々も多様です。アラビア語以外にもクルド語、タマズィグト語、ヌビア語、アラム語などを話す人々が暮らしており、宗教についてもイスラームのみならずキリスト教、ユダヤ教、バハーイー教などの信徒が暮らしています。アラビア語圏の多様性に着目し、異なる文化的背景を持つ人々がどのように共生してきたかという点に注意を払うことも、この地域を捉える上で重要な視点です。
京都大学の初修外国語8言語の中で、アラビア語は日本で最も学習者人口が少ない言語と思われます。この貴重な機会を逃すことなく、未知の世界へと一歩踏み出そうとする、意欲あふれる学生諸君の挑戦を歓迎します。
Q&A
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アラビア語は難しいですか?
実際の難易度よりも心理的な壁がまず大きいと思います。日本語あるいは英語など既習の言語と類似点が少ないので、とっつきにくさを感じる人は多いと思われます。しかし、本コースでは初学者向けの教科書を使って丁寧に授業を進めていきますので、順番に一つ一つ学んでいけば、他の言語よりも習得が難しいということはないと思います。
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どれくらいでアラビア文字を自分で書けるようになりますか?
アラビア文字はアルファベットで、28文字しかなく、それを単語ごとにつなげて書く表記体系を取ります。そのため、文字を覚えてとりあえず書くだけなら、2~3日でできるようになるでしょう。右から左に書くのが難しいかもしれませんが、文字自体は漢字のように複雑ではありません。
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発音は難しいですか?
アラビア語の母音は、基本的に「ア」「イ」「ウ」の3種類なので、母音に関しては苦労しないと思います。子音については練習が必要なものがいくつかありますが、それでも結局のところ、アラビア語を学ぶ日本語話者が一番苦労するのはLとRの使い分けだったりします。つまり、発音に限って言えば、日本語話者の学習者にとってそれほどハードルが高い言語ではないと思います。
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アラビア語は独学できますか?
できると思います。初学者向けの練習問題付き文法書、会話練習帳、読解用教材などが複数出版されていますので、それらをきちんと学べば独学でも習得できると思います。オンライン辞書や自動翻訳、それらの読み上げ機能などのサービスもどんどん充実してきていますので、学習に役立てると良いと思います。
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地域によって方言がありますか?
はい。アラビア語の方言には、大きく分けて、エジプト方言、マシュリク方言(シリア、レバノン、パレスチナ、ヨルダン周辺)、湾岸方言、マグリブ方言(モロッコ、アルジェリア、チュニジア周辺)などがあります。フスハーと比べて一部の文法事項が簡略化されており、語彙や発音、アクセントなども方言ごとに異なります。相互の意思疎通は概ね可能な場合が多いようですが、地理的に離れている方言同士だと難しいこともあるようです。
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アラビア語はペルシア語と似ていますか?
アラビア語はアフロ・アジア語族、ペルシア語はインド・ヨーロッパ語族に属する言語で、異なる系統に属しています。ただし、いくつかの文字を除けば共通の文字および書記体系を使用しますので、一見したところは似ています。また、アラビア語圏とペルシア語圏はいずれもイスラーム文化圏に属し、相互に影響を与え合ってきましたので、語彙の面でも一部共通のものがあります。ちょうど中国語と日本語が漢字を使うので見た目が似ており、語彙についても一部には共通のものがあるという状況に似ているかもしれません。