朝鮮語紹介

Q&A

朝鮮語とは、主に朝鮮半島で使用されている言語のことです。この言語の主な使用者は大韓民国(韓国)および朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)という2つの国家に所属している人たちです。しかしKoreanは実は朝鮮半島以外にも数多く住んでいますので、この言語を使用する人たちは実は世界中にいることになります。
日本のアカデミズムの世界では、この言語を「朝鮮語」と呼ぶことに決まっていますが、「韓国語」とか「コリア語」などという別の呼び方もあります。呼び方は異なりますが、ほぼ同じ言語を指しています。この言語を習得して使用する相手は現在のところほとんどの場合が韓国人ですので、「韓国語」というほうがより耳慣れた呼称であるかもしれません。

さて、最近は韓国の映画やテレビドラマや歌などが日本でも人気ですので、朝鮮語を耳にしたり、ハングルというこの言語の文字を目にしたりする機会が増えました。
日本語母語話者にとって、おそらくこの朝鮮語は、最も習得しやすい外国語だといえるでしょう。それは、まず文法が日本語と酷似していること、それから漢字語の場合、語彙が日本語と共通なものが非常に多いことによります。「私は毎日韓国音楽を聴きながら学校に来ます」という文を朝鮮語にする場合、日本語と全く同じ語順で、日本語と同じように助詞を使って単語をつなげながら、言葉を並べていけばよいのです。「は」「を」「に」という日本語の助詞をそれぞれ「ヌン」「ウル」「エ」という音に変えればそのまま立派な朝鮮語の助詞になります。「毎日」「韓国」「音楽」「学校」という漢字語の語彙は朝鮮語でもそのまま使われます。ですからハングルという見慣れない幾何学模様のような文字の裏には、日本語と驚くほどよく似た言葉の世界が広がっている、といえます。

ハングルというのは朝鮮語を書き記す文字のことです。これは十五世紀に、その当時の言語学と哲学の粋を集めてつくられました(つくられた当時の名称は「訓民正音」)。子音の字母はその子音を発音するときの口や舌や咽喉の形を高度に抽象化してデザイン化したもので、母音の字母は天(●)・地(ー)・人(|)の三才をデザイン化したものです。たとえば[m]の音を表すハングルの字母は□ですが、これはこの子音を発音するときの口を正面から見るとキュッと閉じられていて四角形に見えますので、□の形にしたのです。また[ng]の音を表す字母○は咽喉を正面からのぞきこんだときの形ですが、これは[ng]の音は咽喉の奥から息が口内のどこにもひっかからずにそのまま口外に出るので咽喉の形にしたのです。しかもこのような字母の形は単なるデザイン的な形象ではなく、そこには当時の儒教哲学による陰陽五行の思想が宿っています。たとえば[m]の字母□は形が大地に似ているので(当時は天は円く地は四角いと考えられていました)五行では「土」にあたり、[ng]の字母○は咽喉の形を表していますが咽喉はいつも濡れているので五行の「水」にあたる、という具合です。宇宙に存在するすべての音を陰陽五行で説明しつくそうという壮大な思想的野心の結晶が、この「訓民正音」という文字なのです。朝鮮民族はまったく、とてつもなく独創的で美しい文字をつくったものです。その奥の深さを知ればどんな人でもきっと感動することでしょう。

朝鮮語には母音が二十一個、子音が十九個もありますので、発音を正確に習得するのは多少厄介です。しかし、そんなに神経質になる必要はありませんし、またこれらの微妙な音の違いをマスターすれば、古代の勾玉が触れ合う音もかくやと思わせるような美しい言葉の響きをたのしむことができるようになります。
これからの世界はグローバル化の時代でもありますが、同時に新しいリージョナリズム(地域主義)の時代でもあります。日本が属する東アジアという地域がこれからどのような結合や摩擦を経験するのか。そのことに、日本だけでなく世界の未来がかかっているといってもいいすぎではないでしょう。十九世紀や二十世紀のエリートとは異なり、二十一世紀の日本をリードする人材は、欧米だけでなく東アジアという地域に関しても深い知識と高度な分析能力と大きなビジョンを持つ必要がある、と私は思います。そうでなくては、日本が生きていく道は極端に狭くなってしまう。

朝鮮語の教室を、のぞいてみてください。やさしい外国語ですので、逆に授業でのトレーニングは厳しくしています。予習・復習をきっちりして集中的に学べば、二年間でかなりのレベルまで到達することが可能だからです。最初は課題がきついかもしれませんが、そのうちに朝鮮語の世界を体得することがきっとたのしくなるはずです。

小倉紀蔵著『キゾー式パーフェクトハングル』 DHC 2006

Q&A

  • 朝鮮語の授業はどんなふうに進められるのですか。
    まずはハングルを読めるようにならなくてはすべてが始まりません。ですから、最初の4~5回の授業は、ハングルを正確に発音できるようになるまで訓練します。そのあとは、週1回は日本人教員、週1回はネイティブ(韓国人)の教員による授業で、文法と演習のトレーニングが続きます。京大生なら1年間きっちりやれば、かなりのレベルに達しますよ。こちらが驚くほどです。
  • 朝鮮語は習得するのが簡単だと聞きましたが、単位を取るのも簡単ということですね?
    朝鮮語は日本語と語順が同じですし、漢字語の語彙はほぼ同じなので、習得するのがいたって簡単です。ただ、そのことと、単位の取得が簡単かどうかということは、別問題です。実際、朝鮮語履修者のうち単位を落とす学生が結構います。その理由はいくつかありますが、主なものを挙げると、次のような感じです。①朝鮮語は簡単だと思って安易な態度で履修すると、すぐついていけなくなって慌てふためく。しかし外国語は、いちどついていけなくなると追いつくのが大変なので結局あきらめる。②朝鮮語はほかの外国語より習得が簡単なので、そもそものカリキュラム自体が結構ハードルを高く設定してある。したがってきちんと学習すれば一年間でかなりの実力がつくが、2,3回授業を休むともうついていけなくなる。残念なことではあります。
  • 試験なんかはどんな感じですか。
    かなりむずかしいですよ。まずは文法と語彙をきちんと習得することが基本ですが、そんなことをチェックするだけでは京大に来た意味がないので、もっとクリエーティブな問題も出します。たとえば、「日韓関係について考えることを自由に述べよ」とか「韓国社会の問題点は何か。具体的に述べよ」などという問題も出ます。もちろん日本語は一切使わず、朝鮮語だけで書いてもらいます。
  • それは何回生のテストなんですか。
    1回生です。辞書など一切持ち込み不可の筆記テストです。
  • ちょっと無謀な気もしますが・・・
    全然無謀じゃないですよ。みんな答案用紙にびっしりと書いてきます。京大のレベルにぴったり合った問題といえるでしょう。
  • そんな問題に、どんなふうに答えるのですか。
    自分の考えたことを自由に書いてもらいます。たとえば、「現代韓国社会の最大の問題は、キムチ問題である。幼いこどもたちが辛いキムチを食べられなくなっているという調査報告が出された云々」という答案を書いた学生もいます。
  • へえ、おもしろいですね。2回生になるとどんな授業になるんですか。
    2回生の授業は毎年いろいろ変わります。スピーチコンテストをするときもあります。ひとり5分くらいのスピーチを自由なテーマで話してもらいます。発音はネイティブのTA(ティーチング・アシスタント)がつきっきりで矯正します。
  • おもしろそうだな。
    韓国の本を翻訳したこともありますよ。単に訳読をするのではなく、完成度の高い日本語に訳します。
  • 2回生でできますか。
    京大生は驚くほど能力が高いですよ。韓国の民主主義と社会問題についての、かなり高度な内容の本でしたが、ほぼ完璧に訳しました。
  • なんとなく朝鮮語の雰囲気がわかってきました。
    とにかく、単に文法を覚えるとかそんな授業ではなく、「人生の記憶に残る授業」を目指してやっています。「ああ、2回生のときにあんなむずかしい韓国語の本を訳したけど、ほんまようやったな」と後で思い出すにちがいありません。教室でお待ちしています。