朝鮮語

「はじめて話すのに、なつかしい」

日本語を母語とする人にとって、朝鮮語との出会いは、こんな感じではないか、と思います。今まで全く縁遠い言葉だったのに、はじめてこの言葉に接した途端、なぜか昔から知っていた音のようになつかしく、私たちの心の中で響くのです。

朝鮮語は、主に朝鮮半島に住む人びとによって使われている言葉です。日本でこの言語を呼ぶ名称は一定しておらず、韓国語といったりコリア語といったりもします。本学では朝鮮語と呼んでいますが、韓国語やコリア語といっても内容は全く同じものです。そのほか「ハングル」という名称もありますが、この「ハングル」というのは朝鮮語を表記する「文字」の名前ですので、本来は言語の名称として「ハングル」という言葉を使うのは間違いです。

朝鮮半島には現在、「大韓民国(韓国)」と「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」という二つの国がありますが、この二国はもともと同じ民族の一つの国でしたので、そこで使われている言葉も同じものです。ただ、分断されてすでに60年以上の年月が経っていますので、若干の違いが生じていますが、それでも韓国の人と北朝鮮の人が出会ってもほとんどの言葉は通じます。

朝鮮半島に住む約7千万人の人びとがこの言語を使用しています(そのほか海外に暮らすコリアンも数百万の単位で存在します)。数としてはほかの初修外国語より少ないといえますが、何といっても日本語を母語とする者にとっては、特別に親密な関係にある言語ということができます。単に日本のお隣りの国の言葉だ、というだけでなく、日本語ときわめてよく似た言語である、というのが朝鮮語の最大の特徴といえるでしょう。

まず驚くことは、文のしくみがそっくりなのです。「私は今日バッハを聴きたいです」という日本語を朝鮮語にするには、「私」「は」「今日」「バッハ」「を」「聴き」「たい」「です」という文の要素をひとつひとつ朝鮮語にして、日本語と全く同じ順番でそのまま並べればよいだけなのです。むずかしい文法用語を知らなくても、あっという間に立派な朝鮮語をつくることができます。

そのほか、漢字語を多用し、その熟語が日本語と同じものが非常に多いのも、日本語母語話者にとって非常に学習しやすいポイントです。ハングルという幾何学模様のような文字で表記されていますので、最初はとっつきにくいのですが、実はもともとは漢字からできている語彙が、朝鮮語にはきわめて多いのです。

近年、ようやく隣国の言葉や文化を学習する日本人が増えてきました。歴史的に日本と最も近く、密接な関係にあった朝鮮半島の言葉や文化を知ることは、日本の言葉や文化をより深く知ることにも通じるでしょう。そして21世紀の複雑化する世界情勢理解への足がかりを、隣国を知ることから始めるのも意義あることです。

まず初修者は、「ハングル」という文字を読めるようになる必要があります。ハングルは15世紀に人工的につくられた新しい文字で、そのため非常に合理的なしくみでできています。10の母音字母と14の子音字母を基本として、これを組み合わせて一音節を一文字で表記します。数週間でこの文字に慣れた後の文法の学習は、日本語母語話者には非常に理解しやすいと思います。1年間の学習で、新聞・雑誌などの記事を辞書を引きながら読むことができるレベルに到達することが目標です。その後はより高度な文法を身につけ、読解力を高めてゆきます。朝鮮半島と日本の関係、世界の中での朝鮮半島の位置づけなどの点に留意しながら、多様な文献を読み、朝鮮半島の人びととコミュニケーションする能力を養います。

◆全回生対象(初級)

朝鮮語ⅠA・B(文法) Primary Korean A・B
朝鮮語ⅠA・B(実習) Primary Korean A・B

◆2回生以上対象(中級)

朝鮮語ⅡA・B Intermediate Korean A・B
朝鮮語ⅡA・B(実習) Intermediate Korean A・B