化学の方法論入門 2012年度

化学は、さまざまな物質の構造と性質を明かにするとともに、物質がどのよう
に変換されていくかを解明する学問分野です。身のまわりを見渡してみると世
の中には物質が満ちあふれていますが、これらの物質やそれが関与する現象は
ほとんどすべて化学という学問の対象です。

現代化学は原子レベルでのミクロな世界を支配する力学に立脚し、多彩な物質
群に関する精緻な知見を積みあげてきましたし、また、新たな物質合成により、
私達の生活を支えるとともに、人類が現在直面しているエネルギーや地球環境
問題にも大きく関わっています。このように、化学は物質科学の中核として重
要な位置を占めていますが、現代化学の考え方や方法論を理解するためには、
物理学の基礎を含めて様々な基礎知識が必要となります。高校の化学とはずい
ぶん違います。したがって、大学では化学を系統的に理解できるようにと様々
な講義が行われています。講義はできるだけ効率よく重要な概念を理解できる
ように工夫されていますが、様々な概念がどのような歴史的ないきさつを経て
できあがってきたのかまで立ちいる余裕はあまりありません。

そこで、本ゼミナールでは、大学の通常の化学の講義とは異なり、歴史的な観
点から化学の発展をとらえ、高校の化学を脱却し、現代化学の方法論やその考
え方の理解を深めることを目指します。

教材としては、竹内敬人 著「人物で語る化学入門」(岩波新書)を用いる予定で
す。忙しい講義の合間を縫って化学の諸先輩がどのようにして重要な発見に至っ
たのかに思いを馳せてみましょう。

松本 吉泰

所属:理学研究科化学専攻・教授
出身:京都
専門分野:表面分光学、表面光化学
趣味:室内楽でのヴィオラパート担当