初等整数論 2012年度

[授業の概要・目的]
数学の理論は学問として整った体系を持ち、それを学ぶことは「理論の型」を知ることができる点で、これから学問を学ぶ者にとって有用だろう。理論の目指すものは分野ごとに異なり、数学のような厳密で論理的な理論展開をすることはむしろ例外的だろうが、論理に頼れなければ尚更、例えばデータから結論を引き出すにも自分なりの視点や哲学を持ち、理論の全体像を予見することが重要になろう。
ここでは数学の中でも古い歴史を持ち、長い数学の歴史の中で今日まで重要性を失わないものとして初等整数論を選び、主に高木貞治の「初等整数論講義」の第1章を読んで、ガウスが整数論の基本定理と見なした平方剰余の相互法則の証明とその意義を理解することを目的とする。

[授業計画と内容]
高木貞治の「初等整数論講義 第2版」を読む。主にセミナー形式で受講者に順番に(第1章§4の附記で紹介された諸定理のように明らかに証明が難しいために省略されたこと以外は証明の細部を補って)読んで発表してもらい、第1章の終わりまでを確実に理解することを目指す。
第1章は以下の14節から成る。この順に平均1節/回のペースで読む。
§1  整数の整除
§2  最大公約数、最小公倍数
§3  一次の不定方程式
§4  素数
    附記 素数の分布
§5  合同式
§6  一次合同式
§7  合同式解法の概論
§8  Euler の函数φ(n)
§9  1のn乗根
§10 Fermat の定理
§11 原始根、指数
§12 平方剰余、Legendre の記号
§13 平方剰余の相互法則
§14 Jacobi の記号

[成績評価の方法・基準]
定期試験45%、自分の発表内容の理解度の評価45%、授業内での発言内容の評価10%

[その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)]
ポケゼミの趣旨に従い、微積分と線形代数を含む大学レベルの数学を仮定せず、かつ(高校数学との隔たりが大きく心理的な障壁になり得る)抽象代数学をなるべく前面に出さないテキストを選んだが、数学である以上テクニカルな側面を避けて通る訳には行かない。しっかりした内容のある数学の本は時に読みにくく、理解し辛いこともあるが、何度も読み返すうちに視界が開けて来るものである。諦めずに努力し、日々の予習、復習を怠らないようにしてほしい。


塩田 隆比呂

所属:理学研究科、職名:准教授、生年:1957年、出身地:高知県、
専門分野:数学、趣味:芸術鑑賞など