環境の評価 2012年度

スギ材の重さを実感する.
 生木が想像以上に重いことに驚く
シカ排除実験地の観察.
 緑色のネットの向こう(シカ排除区)と手前で草本の種類と量が全く違っている
大カツラ保存木の前で.
レポートの発表と討議.

 このポケット・ゼミは、5月から7月にかけて教室で8回の討論形式の授業を行った後、8月に芦生研究林にて1泊2日の合宿を行い、自然と人間の関係に関わる森林環境を視察したあと、環境評価に関するレポートの発表と議論をするという構成で実施している。環境の持つさまざまな価値を人間が認識し、自らの態度や行動を決定する際には、その環境の価値を判断している、という枠組み設定に基づいて議論を進めている。
○「環境を評価する」とはいったいどういうことか
 教室でのゼミでは、人が事物を認識し]価驍m認から、環境の評価が環境の価値判断となり、人の環境への態度・行動につながるという因果関係について議論しながら検討する。環境を評価することの意味については、学生毎にかなり異なる意見を持っていることが分かり、簡単なことではないという印象を持つ受講生が多かった。環境に価値=l段驍c論すると賛否両論があるが、学部によって色合いに違いあり、1回生であっても所属学部に特徴的な感性、発想をすでに持っていることが分かり興味深い。また、この違いを元に受講生の間でも議論が弾み、全学共通の少人数ゼミ形式であることの大きなメリットだと思う。
○人間中心主義か非人間中心主義か
 自分のものの考え方は人間中心主義的か、非人間中心主義的か、このポケット・ゼミを受講するまで考えたことのある学生はほとんどいない。環境を評価する際の自分の観点を始めて認識し、他の学生の意見も聞くうちに自分の考えが変化する学生と変化しない学生がいるが、自問自答する姿勢がいつも感じられる。
○記事に表れる「環境の評価」
 レポートは、環境に関する新聞等の記事を自ら選び、そこに含まれる「環境評価」の文脈の抽出と解説を課している。その内容を芦生研究林の視察のあと、合宿形式で披露し議論することにしている。研究林内では、天然生林、人工林の観察に加え、林内数カ所で実施されているシカ排除実験地を観察したり、廃村の跡地を見ながら、過去の人間の森への関わりに思いを馳せることにしている。2011年は、東日本大震災に関連し、合宿直前に話題となった京都五山の送り火での被災松使用をレポートの課題に取り上げた学生がいた。科学的に評価された放射能汚染の数値と放射能を怖れるという社会的評価の関係についても議論でき、大変有意義であった。

吉岡 崇仁

所 属:フィールド科学教育研究センター、 
職 名:教授、 専門分野:生物地球化学
著 書:「生物地球化学」、2006、南川雅男・吉岡崇仁編著、培風館.
    「環境意識調査法-環境シナリオと人々の選好-」、2009、吉岡崇仁編著、勁草書房.

 なお、フィールド研教員が担当しているポケット・ゼミの報告は、フィールド研のホームページ(下記URL)に掲載されています。
 URL:http://fserc.kyoto-u.ac.jp/wp/blog/archives/5792Icon new window