お魚好きのための魚類研究入門 2012年度

各自が採集してきた魚の解剖
丹後魚っ知館のバックヤード見学
由良川河口近辺での魚類資源量調査1
由良川河口近辺での魚類資源量調査2
緑洋丸による由良浜沖ベントス採集
ゼミを振り返っての最終ミーティング

 魚釣りや熱帯魚飼育など「お遊び」の対象である「おさかな」を、研究で用いるテクニック・機材を使って専門的に調べることを通して、魚類研究入門の手助けとすることを目的としています。魚類に関する知識の「お勉強」ではなく、実際に手を動かしたり実物を観察したりすることによって、ナマの生物を丸ごとのままで捉える感覚や、大学での研究生活の雰囲気のようなものを伝えたいと考えています。
 そのため、魚取り・魚釣りや熱帯魚飼育などを趣味とするような、もともと「お魚好き」の学生を対象とします。文系・理系は問いませんが「魚は食べるのが好き」というだけの学生は基本的に対象としません。実習を主としているため時間割通りに終了しないことが多い点にも注意してください。舞鶴で行う実習にかかる旅費・宿泊費等(計約5千円)は受講生の負担となります。また、傷害保険(学生教育研究災害傷害保険)への加入が必須です。

京都大学北部キャンパスにおいて8回程度の講義と実習を行ったのち、フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所において2泊3日のフィールド実習を実施する予定です。実際に手を動かしながら、かつ議論しながら進めるため募集人数を6名に制限しています。そのため、希望者が6人を越えた場合には、残念ながら抽選となります。

京都での講義と実習の予定(月曜4限の予定)
第1・2回目:魚について、考えられる限り多様な「問い」をブレーンストーミング様式で発してもらいます。討論を行いながらこれらを魚類研究の学問分野に割り振りを行い、学問体系の雰囲気の把握を目指します。
第3・4回目:小型魚類(メダカ)を用いて、実際に受精卵が卵割する瞬間を各自に実体顕微鏡下で見てもらう予定です。また、各自が受精卵を自宅に持ち帰り、河川や池の水で発生する経過を観察してもらいます。翌々週頃に全員のデータを集計し、データの分析法や結果の考え方について討論をおこないます。
第5・6・7回目:各自が採集してきた魚、あるいはこちらで準備した魚を材料とします。検索表を用いた種同定の方法、外部形態の詳しい観察法のトレーニングを行います。さらに、解剖を行い、各種臓器や胃内容物の観察も試みるつもりです。これらのデータとネットや文献による情報に基づいて、その魚の「生き様」を推測する作業を各自に行ってもらいます。データを教員がパワーポイントのファイルにまとめ、発表会形式で討論を行います。
第8回目:舞鶴での実習に備えてのガイダンス、魚の飼育に関する生理学的な基礎知識、 および資源量調査の基礎知識などを講義します。

舞鶴での実習(天候やその他の事情によって変更する可能性があります)
1日目:昼頃に宮津エネルギー研究所水族館(丹後魚っ知館)に集合します。普段は見ることができない水槽裏側の設備や繁殖水槽等を、飼育担当の方から詳しい説明を受けながら見学します。その後、舞鶴水産実験所に向かい、飼育設備および標本館の見学などを行います。毎年、釣りをするゼミ生もいます。
2日目:由良川の河口域でケタ網と呼ばれる底引き網の一種を使って魚を採集します。採れた魚類のうち、ハゼの仲間の一種について、ヒレを切除して放流し、1時間程度の後でもう一度、網を引いて捕まえます。採れたその種の魚の全個体数およびヒレ切除個体数を計数して、そのエリアにいるその種の魚の個体数を計算で求めます(ピーターセン法)。
3日目:舞鶴の教職員の方々のお世話になり、緑洋丸という調査船にて由良浜沖でケタ網採集を行います。5m、10m、30mの3深度で採集される生物相の差異を観察します。また、普段実物を目にする機会のない魚群探知機や海洋観測機器を見学します。3時前に舞鶴水産実験所を出発して、各自、京都に向かいます。

フィールド科学教育研究センター 准教授 田川 正朋 フィールド科学教育研究センター 助教  中山 耕至