藻の光合成とバイオテクノロジー 2012年度

緑藻クラミドモナス・・・巨大葉緑体,オレンジ色の眼点,2本の鞭毛が観察できる。葉緑体内の青色顆粒はBPBで染色されたピレノイド。

ゼミの目的
光合成生物(Photosynthetic organism)は,太陽の光エネルギーを利用して二酸化炭素からいろんな有機物を生産します。農業では「デンプン」や「油脂」を食糧として,あるいは「樹木」を建材等に利用します。また,工業では「石炭」や「石油」をエネルギー源や工業原料として利用します。つまり,我々の生活(つまり命)は光合成生物によって支えられているのです。この光合成を理解する研究材料として,微細藻類(葉緑体の祖先であるシアノバクテリアや単細胞の緑藻)が以前から用いられてきました。例えば,カルビンはクロレラの培養液に放射性標識した重炭酸イオンを用いて,炭酸固定経路を解明し,その業績によってノーベル賞を受賞しました。この講義では,世界中でモデル生物として利用されている緑藻「クラミドモナス」を使って,光合成や生殖といった生物学ならびに最新のバイオテクノロジー(遺伝子工学・バイオ燃料生産)について実験を通して理解を深めることを目的としています。バイオテクノロジーの基礎である分子細胞生物学,遺伝子工学,さらに文献や遺伝子の情報を入手するために必要となるデータベースや遺伝子の解析手法についても実習できます。

授業計画と内容
 次の各項目について講義と実習をセットにして学習を進め,実験結果の科学的な考察や,科学的な(道理にかなった)議論とは何かを体得してもらいます。
1. 野外から藻を採取し,光学顕微鏡観察によって藻の多様性を理解する。
2. 光合成を測定する方法を理解し,生物種による光合成能の違いを理解する。
3. 光エネルギーを化学エネルギーに変換する装置について理解を深める。
4. CO2の濃縮ならびに固定に関わる諸酵素の活性と遺伝子の発現を理解する。
5. 無菌操作を理解し,種々の環境条件で緑藻クラミドモナスを培養する。
6. 培養条件の違いによって光合成反応生成物が変化することを理解する。
7. PCR法によって雌雄の遺伝子型を判別するともに,雌雄配偶子が凝集・接合する様子を観察し,性の遺伝子型と表現型の関連を理解する。
8. 遺伝子導入により光合成活性が変化した株の諸性質を理解し,光合成の改良について理解を深める。
9. インターネット上のデータベースを利用して遺伝子情報や文献情報を調べ,最新のバイオテクノロジーについて理解を深める。

受講を希望する人へ
成績は,講義中に質問する事項についての簡単なレポートを提出してもらい,これを評価の材料とします。出席を重視します。
質問があれば,教員宛(fukuzawa@lif.kyoto-u.ac.jp)にメールで連絡して下さい。時間を調整して研究室で面談することも可能です。また,本ゼミには実験が含まれているので,白衣とスリッパを準備して下さい。参考図書は講義中に紹介します。

福澤 秀哉

生命科学研究科,教授,
専門分野:分子細胞生物学,ゲノム科学,光合成
京大広報N671の「洛書」に記事あり(下記)。http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/issue/kouhou/documents/2011/671.pdfIcon new window
研究室ホームページ:
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/labs/molecule/Icon new window
生命科学研究科での紹介ページ:
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/j/modules/education/content0039.htmlIcon new window
キーワード:分子生物学 / 遺伝子工学 / 光合成 / 二酸化炭素 / バイオインフォーマティクス