教育人間学入門 2013年度

[授業の概要・目的]
動物絵本の人間学

ピーターラビット、ミッフィー、ぞうのババール、絵本にはしばしば動物が登場する。むしろ動物が登場する動物絵本が絵本の中心だといってもよいほどである。それはいったいどうしてだろうか。動物絵本は子どもが成長する上でどのような意味があるのだろうか。

一般に動物は、私たちに「人間」であることを自覚させる「鏡」であると言える。しかし動物はそれ以上に重要な存在ではないだろうか。むしろ動物は私たちが人間的在り方を超えた野生の存在でもあることを体験させる「他者」ではないだろうか。あなたは子どものときにイヌやネコを飼いたいと思わなかったか、動物園に行きたいと切に願わなかっただろうか。動物との交感は、人間同士のコミュニケーションとは異なる深い体験を与える。この「他者」との出会いをとおして、子どもは「人間」となり「人間」を超えるとはいえないだろうか。そしてその動物との出会い方を、かつては神話や民話がそうであったように、絵本が伝えているのではないだろうか。

動物絵本を手がかりにして、人が大人になるとはどのようなことなのか、子どもという在り方はどのような在り方なのか、絵本といったメディアはどのような意味をもつのか、そして動物と出会うことが真に人間となる上でどのような意味をもつのか、「教育人間学」の基本的な考え方を学ぶ。


[授業計画と内容]
授業は教科書を使用し、次の順番で進む。

はじめに―――――――――――――――この世のはじめに子どもが出会う本(1回)
Ⅰ 動物絵本は今日の動物‐人間学である――――動物絵本とは何か(2回)
Ⅱ 擬人法と逆擬人法をめぐる冒険―――――――動物絵本の生の技法(2回)
Ⅲ ファンタジーとノンセンスの力―――――――動物絵本の文法(2回)
Ⅳ 動物と出会うことと動物に変わること――――動物絵本の類型(2回)
Ⅴ 寓意でもなくシンボルでもなく―――――――近代動物絵本の誕生(2回)
Ⅵ ノスタルジーを超えて―――――――子どもと大人が生きる動物絵本(2回)
最後のまとめ(1回)

毎時間絵本を読む。適時、絵本以外にも小説や映画・アニメ等他のメディアにおける動物の事例を取りあげ、議論を深める。


[成績評価の方法・基準]
出席状況によって評価するが、授業時間での発表時の評価を加える。


[その他(授業外学習の指示・オフィスアワー等)]
授業は教科書の各章を、担当にあたった発表者がまとめて報告する。また動物絵本の実物を適時取りあげ、それぞれにみんなの前で読んでもらうことになる。

矢野 智司

所属:教育学研究科
職名:教授
生年:1954年
出身地:神戸
専門分野:教育人間学