考古学入門 2013年度

 みなさんは「考古学」ときくと、何を連想しますか。博物館に展示されている土器や石器のことを思い出すでしょうか。エジプトのピラミッド、ギリシャのパルテノン神殿などが頭に浮かぶ人もいるでしょう。「となりのトトロ」の主人公姉妹の父親や、世界を股にかけて活躍するインディ・ジョーンズは、「考古学者」という設定になっています。そうしたアニメや映画の影響があるのか、考古学に対して、「夢」・「ロマン」・「冒険」といったイメージをもっている人も少なくありません。
 しかし、「では、考古学とはどんな学問なのか?」と問われると、なかなか明確に答えられないのではないでしょうか。時々聞かされるのは、「考古学は恐竜を発掘するんでしょう?」という質問です。確かに考古学者は、地下に埋もれたものを掘り出す(これを「発掘」といいます)のですが、決して恐竜やマンモスの化石を探しているではありません。発掘によって過去の人類が生活した痕跡を見つけ出し、それを手がかりとして人類の歴史を明らかにしようとするのが、考古学の目的なのです。では、考古学者はどのようにして、土の中から出てきた土器や石器を通して、人類の歴史を知ることができるのでしょうか。その基本的な考え方を、実習を通して学ぶのが本ポケットゼミの目標です。
 実は、京都大学吉田キャンパスの地下には、縄文時代から幕末に至るまでのさまざまな人間の活動の痕跡が残されています(こうした場所を「遺跡」と呼びます)。また、大文字で有名な如意ヶ岳、観光シーズンには多くの人々が訪れる嵯峨野などにも、さまざまな時代の遺跡があります。そこで本ゼミでは、本から知識を得るだけではなく、できる限り現地に出向いて遺跡を探し、観察し、記録する作業を体験することを通して、「身をもって」考古学という学問について考えてみたいと思います。
 考古学や歴史に関心がある人であれば、学部に関係なく参加を歓迎します。ただし、遺跡を調査するために、ひたすら歩くことだけは覚悟してください(10km以上は歩きます)。時には、山を登ったり、遺跡を探すために道のない藪の中につっこんだり、古墳の内部にもぐり込んだりします(写真参照)。私が安全を確認しながら進みますので、問題はないはずですが、念のために学生教育研究災害傷害保険には加入しておいて下さい。それではみなさんの参加をお待ちしています。

吉井 秀夫

文学研究科 准教授(考古学専修)。
1964年兵庫県神戸市に生まれ、加古川市で育つ。専門は朝鮮考古学。どのような研究をしているのか知りたい方は、ホームページ(http://hb3.seikyou.ne.jp/home/Hideo.Yoshii/Icon new window)をみてください。