酵素を用いた高感度分析 2013年度

 化学の分野では、試料中の成分の種類や存在量を解析することを分析といいます。分析の目的や対象は多岐にわたりますが、どの分析においても、正確であること、感度が高いこと、迅速であること、操作性がよいことが求められます。低コストであることも重要です。これらのニーズに答えるため、分析技術は日進月歩しています。
 酵素は触媒活性をもつタンパク質の総称です。生物の営む多様な反応(生命の反応)は、体内の酵素により効率よく行われ、正確に制御されています。一方、酵素は産業上でも広く応用されています。そのひとつが分析です。酵素を用いた分析法の特長は感度がとても高いことです。特定のタンパク質をpg(ピコグラム、1兆分の1グラム)のレベルで検出することが可能です。核酸にいたっては、数分子のレベルで検出することも可能です。驚くべき高感度です。日本人の平均寿命が高くなった一因として、臨床検査の分野で酵素を用いた高感度な分析法がいろいろと開発され、診断が正確に行えるようになったことがあげられると思います。
 このゼミでは、酵素を用いた分析法がいかに高感度であるかを実験で体験し、なぜ高感度であるかを講義で学びます。酵素を用いた分析法の市場、開発、製造、販売についても触れたいと思います。少人数なので、講義は相互討論を含みます。酵素を用いた分析法を総合的に理解し、自分なりに体系化していただくことがこのゼミの目的です。タンパク質、核酸、酵素の基礎的なことについても履修者のニーズに合わせて講義しますので、特段の予備知識は必要としません

保川 清

農学研究科食品生物科学専攻酵素化学分野、准教授
出身地:大阪府大阪市
専門分野:酵素化学・蛋白質工学
趣味:旅行