コルモゴロフ「確率論の基礎概念」を読む 2013年度

確率論の起源は17世紀にパスカルとフェルマーとの間で交わされた往復書簡に遡ると言われている.19世紀初頭のラプラスの著書において古典確率論は集大成されたが,確率論を展開する基礎に関する議論は明確でなかった.20世紀に入って無限個の確率変数を扱う研究が現れ始めた頃,コルモゴロフにより著書「確率論の基礎概念」が出版され,偶然現象を一般的に論ずる数学的基礎が明確にされた.この理論は,ちょうど同じ頃にルベーグにより提唱された測度と積分の理論に基づいており,解析学の他の分野とも調和して広く受け入れられ,現代確率論が今日のように発展するための豊かな土壌をもたらしたのである.

このゼミの目的は,コルモゴロフ著「確率論の基礎概念」を輪読し,その意味するところを様々な角度から理解しようと試みることである.

このテキストの数学的内容を真に理解して活用できるようにするためには大学課程の解析学の理解が必要であるが,それはこのゼミの趣旨ではない.このゼミの目的はあくまで,高校数学の予備知識だけを仮定し,受講者各自の力で理解できるところまで最大限の努力をすることである.

数列,総和記号,集合と論理,確率について高校課程の内容をよく理解していることが必要である.高度な計算技術や複雑な組み合わせ計算は必要ではない.求められるのは,記号や論理を柔軟に使いこなす能力と,確率論に対する強い興味である.

矢野 孝次

理学研究科,准教授