有機分子たちを考えて日常生活を理解しよう 2013年度

 地球上の生き物は、動物も植物も、全て有機化合物からできています。  
プラスチックや化学繊維などの、人工の有機化合物もたくさんあります。
 
何も知らなくても特に生活に不自由を感じることはないでしょうが、より深く理解することができれば、人生がより彩り豊かになると思いませんか?  
例えば、  
なるほど、炭素と酸素の違い考えると、水と油が混じらないのは当然ですね。  
油汚れが洗濯できる(油汚れが繊維から水に移動する)のは、洗剤(の中の有機分子)がこういう働きをしているのですね。  
と実感することができれば、楽しいと思いませんか?

有機化学は面白くない。覚えることばかりでうんざりする。なんて思っていませんか?  
 実は、最小限の知識(お約束ごと)で有機分子たちを理解することができ、日常生活を考えることができるのです。

  最小限のお約束ごととは‥ 
全ての物質は原子からできている。  
原子は原子核と電子からできている。  
電子は、原子核のまわりの、定まった区域(軌道)に存在する。  
軌道には、特有の形(s軌道とかp軌道など)がある。  
軌道と軌道は、混じり合う(重なり合う、混成する)ことができる。  二つの原子の軌道が混じり合い、そこに電子が二つあると、二つの原子が「結合」する。  
水素原子の最外殻の電子は1つ、炭素原子の最外殻の電子は4つ、酸素原子の最外殻の電子は6つである。
(混じり合ったものも含めて)最外殻の軌道に、水素の場合は2つ、炭素や酸素の場合は8つの電子があると、その系は安定になる。
以上です。

 このポケゼミでは、分子模型(例を写真で示します)を使いながらこれらの「お約束ごと」をゆっくりと考え、あとはこれらを使って日常生活を理解していきます。
 知識は、持っているだけでは何の役にも立たないのです。知識だけなら、インターネットを使えばいくらでも手に入ります。人間の頭の使い方として大切なことは、持っている知識を活用して物事を理解し、新たな創造につなげていくことなのです。  
 有機化学を例として用い、知識の使いこなし方を身につけて頂くことが、このポケゼミのもう一つの目的です。

年光 昭夫

化学研究所 教授
生年:1949年
出身:東京都
専門:有機合成化学
趣味:囲碁、スキー、ゴルフ