再生可能バイオマス資源の形成と利用 2013年度

 地球環境問題やエネルギー問題など人類を取り巻く状況は年々厳しくなっており、今後人類が生存を続けていくには、化石エネルギーに対する依存度を下げ、再生可能エネルギーに対する依存度を大幅に上昇させることが必須と考えられます。再生可能エネルギーには、いろいろなものがあり、例えば、太陽エネルギー、水力エネルギー、風力エネルギー、地熱エネルギー、バイオマスエネルギー等があります。これらの再生可能エネルギーは何れも重要ですが、バイオマスは液体燃料や工業原材料などの有機化合物を供給することができる点が非常に重要です。また、バイオマス資源は賦存量が多いことも重要な特性です。加えて、植物バイオマスは大気中の二酸化炭素の固定により生成することから、その生産はカーボンニュートラルであるとともに、地球温暖化対策に貢献しうる点も見逃せません。従って、再生可能エネルギー資源の中で植物バイオマス資源は特に重要であり、その持続的生産と有効利用システムの確立が世界的に強く求められています。また、再生可能バイオマス資源の中で最も蓄積量の多いものは木質バイオマスです。
 本ゼミでは、再生可能バイオマス資源の特徴、生産・利用の現状、木質バイオマスの組織構造・成分化学、木質バイオマス資源の有効利用に向けた分子育種(遺伝子組換え技術や遺伝子情報を利用した育種)の現状と将来展望について解説しています。
本ゼミは、平成21年度に開講しましたが、各年度とも受講生は熱心に聴いてくれました。過去四年度のゼミで驚いたことは、受講生が遺伝子組換え食品の現状についてほとんど知識を持っていないことです。逆に、本ゼミでその点説明する甲斐があるとも言えるのですが・・。ともかく、現状では世界で生産されるダイズの8割程度は組換えダイズであり、遺伝子組換えの表示義務のない油脂などでは、大量に組換えダイズ由来の製品がわが国でも消費されているはずです。その状況を説明すると、ほぼ全員目を丸くしてもっと現状の正確な広報が必要だというコメントが寄せられるような状態です。安全と安心の違いを認識してもらい、現状を合理的に評価していただく手伝いができればと考えています。
また、バイオマス資源の生産・利用の研究開発に限りませんが、多くの研究分野において、農・工・理・医・薬などの理科系諸分野と文科系諸分野の合理的な必要性に基づく研究の連携が必須であると、近年特に強く言われています。確かに、学生の皆さんには、俯瞰的な視点をぜひ養っていただきたいと思います。本ゼミがその手助けになればと考えています。加えて、おそらく学部学生にとってはもっと重要なこととして、其々の専門分野の勉強を深めるように努めていただきたいと思います。

梅澤 俊明(うめざわ としあき)

京都大学生存圏研究所森林代謝機能化学分野 教授
1957年、高知県生
専門分野 植物代謝機能化学、樹木代謝工学、木質有機化学
趣味 書籍乱読、出張先の各国のビール賞味