ケインズを学ぶ 2013年度

 20世紀経済学の天才ケインズの思想と理論への入門書、および大学教育についてのJ・S・ミルの古典的な文章を読む。理系にも文系にも教養として知っておいてほしい題材を取り上げたい。
 ケインズは高校の教科書にも名前が登場するほど有名だが、その思想や理論が必ずしも正確に理解されてきたわけではない。マスコミでは不況対策としての財政出動(しばしば財政赤字を伴う)を指して「ケインズ主義」と呼ばれることがあるが、ケインズは生涯を通じて貨幣理論家であり、安易な財政出動には慎重であった。授業ではできるだけ原典に即した内容を教授したい。
 ミルのほうは経済学者というよりも19世紀における偉大な知識人だったが、その多方面にわたる仕事にも留意しながらテキストを読んでいきたい。旧制高校の時代にミルの『自由論』がよく英語のテキストに使われたらしいが、彼が異なる意見に対する寛容の態度こそが「自由」の本質であると主張したことは、今日においても傾聴に値すると思う。彼が「大学教育」について語った文章も同様である。
 ゼミは参加者一人ずつにテキストの1章を割り当て、発表してもらう。レジュメの書き方などは授業で指示する。
 予備知識は不要だが、もし意欲があれば、拙著『経済学はこう考える』(ちくまプリマー新書)を読んでおいてほしい。

根井 雅弘

経済学研究科 教授
1962年生まれ
宮崎県出身
現代経済思想史専攻
参考URL
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/forefront/vol12.htmIcon new window