鉄道と航空技術の歴史の旅 2013年度

交通科学博物館にて(東海道在来線旧こだま型運転席)
ライト兄弟初飛行の記念碑,手前が離陸地点,後ろの4つが初飛行の日の4回の飛行の着地点(米国ノースカロライナ州キティーホーク)

 平成25年度のポケットゼミの「鉄道と航空技術の歴史の旅」を担当する北條です.私は工学部物理工学科機械システム学コース(大学院工学研究科機械理工学専攻)で,材料力学を教えています.専門領域は,材料の強度,特に最新鋭旅客機B787で話題になっている日本発の軽くて強い先進材料(複合材料)の強度です.交通機関にとって「安全」と消費エネルギー削減は,相反する最重要事項です.ドイツでは1998年と2008年に高速鉄道の車輪や車軸が破壊して大きな事故が発生しています.1985年に御巣鷹の尾根で発生したB747機事故は,皆さんも知っていると思います.これらは,金属材料に繰返し力がかかったときの破壊が原因で起こりました.最先端の英知を結集しても,いまだに皆無にできない事象です.私は,最先端の複合材料でこのような破壊事故をいかに防ぐかの,基礎研究をしています.
 個人的には,鉄道研究会の顧問をしております.いわゆる「鉄チャン」です.英語ではRailway enthusiasts,ドイツ語ではEisenbahn Freundeと呼ばれます.もう一つの趣味はクラシック音楽鑑賞です.ヨーロッパに行くと,BrahmsやDvorakという名前の国際特急列車も走っており,両者には少しだけ関係があります.
 鉄道は,技術の発展だけでなく,自然環境,社会環境,国家およびその地域社会と密接に関係します.この意味において,工学,地理学,歴史学など,幅広い学問と関係します.本ポケットゼミでは,その中で,特に工学と地理学の観点から,鉄道について学びます.さらに,航空技術については,その祖であるライト兄弟の足跡,現在の航空機の技術を支えるBoeing社や,炭素繊維の技術史を学びます.具体的には,科学技術の史跡,鉄道の基礎知識,鉄道の発達過程,自然・社会環境と鉄道,旅行と鉄道,航空の技術史,材料が世界を変える,の項目を予定しています.
 講義は,授業形式の解説,創造型の演習に加え,2回程度フィールドワークに出たいと考えています.鉄道に関して,京都近郊の路線の変化と技術遺産である線路跡および大阪弁天町の交通科学博物館を訪ね,技術の発展の歴史とその保存状況を学びます.航空に関しては,私の海外調査での写真を中心に解説します.
 百万遍の交差点では,歩道が非常に広くなっています.地図を見るとJR奈良線のJR藤森駅の北側に,名神高速道路と奈良線をつなぐような形の道路があります.野球のヤクルトは何故スワローズなのでしょうか.「出発進行」の語源は?これらの身近な対象を,本ゼミで楽しく勉強したいと思います.文理関係なく受講できますが,技術・技術史および地理学に関心のある学生の受講を希望します.

北條 正樹

工学研究科機械理工学専攻教授 1957年京都府生まれ
専門分野と趣味は本文参照