霊長類の進化とヒトのこれから 2013年度

ゼミナールの目的と進め方
 私たちヒトは、どういう経過をたどって誕生し、生物界の中でなぜこのような特殊な位置を占めるようになったのか。ヒトは、どのような特性をもった生物なのか。ヒトは将来にわたって他の生物と共存していくことは可能なのか。可能だとすれば、今後どのようなことを考えて行かなくてはならないのか。これらの問いは、霊長類やヒトの進化を研究する者だけでなく、ヒトの活動を対象とするあらゆる文科系研究分野の研究者にとっても、避けて通ることのできない問題です。
 京都大学から始まったと言っても過言ではない霊長類学は、このようなヒトの存在の意味を明らかにすることを、大きな目標のひとつとして発展してきました。とくに近年は、ヒトの誕生の秘密に迫るさまざまな研究成果や発見が相次ぎ、従来のヒトの見方を大きく変えなくてはいけない時期に来ています。このゼミナールでは、自然人類学、霊長類学の書籍の講読と討論を通して最新の研究成果に触れ、新しいヒト進化論について考えていきたいと思います。
 ゼミナールは、主としてジャレド・ダイアモンドの名著『人間はどこまでチンパンジーか:人類進化の栄光と翳り』(新曜社)を用いて進めます。各受講者に好きな章を選んでもらい、毎週2人ずつ、章の内容とその章に関連することで自分で調べてきたトピックについてパワーポイントを用いて発表し、全員で討論を行います。

校外実習
 11回目以降の授業にかえて、5月16日(木曜日)から5月19日(日曜日)の3泊4日、宮城県牡鹿半島沖の金華山島で野生ニホンザルの観察実習を行います。金華山島ではこれまで毎年実習を行ってきましたが、このたびの東日本大震災で震源にもっとも近かったこの島も大きな被害を受けました。しかし、ディズニー財団等国内外からの資金援助やボランティアの方々のご努力で、港も調査基地として用いてきた山小屋もようやく使えるようになり、昨年度5月に震災後はじめてとなる実習を行いました。今年度も、牡鹿半島の被災地の復興の様子や、地震と津波を乗り越えてきた金華山島の自然の様子からさまざまなことを学びたいと考えています。交通費・宿泊費・食費は自己負担で、夜行バス利用の場合合計25,000円程度の予定です。

古市 剛史

所属:京都大学霊長類研究所
職名:教授
生年:1957年
出身地:滋賀県
専門分野:霊長類学、人類進化学
趣味等:登山、クラシックギター演奏