ブナ林・菌類ゼミナール 2014年度

きのこを探して歩く(2012)
カナダでのフィールドワーク(2010)
一家に1枚「冬虫夏草」(2013)
森で出会ったきのこ(2012)
菌類カードを楽しむ(2012)

 菌類をテーマにしたポケゼミを、2009年度から開催しています。菌類ってどんな生物か、ご存知ですが? 一般には、カビやきのこ、酵母として知られる生物です。カビはモチやお風呂場に生えるし、きのこは味噌汁や鍋によく入っていて、お馴染みの生物ですね。酵母はワインや日本酒を作るときのアルコール発酵だけでなく、パンを膨らますのにも使われています。
 このように菌類は、私たちの生活にも馴染み深い存在ですが、しかし高校までの理科や生物では断片的にしか習いませんし、高校を卒業してもほとんどの人が、生物としての菌類を知ることなく社会に出て行きます。そもそも、菌類の自然界での暮らしや、多様性(どんな種類が、どれくらいいるのか?)についても不明点が多く、まだまだナゾの多いミステリアスな生物群です。だからこそ、面白い。

 このポケゼミでは、これまで菌類の進化(2009)、極地の菌類(2010)、発酵(2011)、学習カードの作成(2012)、図解の作成(2013)と、菌類にまつわる幅広いテーマに取り組んできました。さまざまな学部の、のべ22名の学生が参加しています。
 例えば「図解の作成(2013)」では、まず参加者たちが話し合って、昆虫に生えるきのこ「冬虫夏草」をプロジェクトのテーマに選びました。各人が各人の興味に基づいて調べた内容を発表して、それに対して皆で意見を出し合いました。そしてそれらの内容を集約して、「冬虫夏草」の豊かな世界の全貌を、1枚のポスターにまとめ上げました。
 2014年度は「ブナ林の菌類」です。ブナ林は豊かな生物相を育む「母なる森」です。菌類も、ブナ林のいたるところで、人知れず生活を営んでいます。このゼミでは、ブナ林でのフィールドワークを通じて、菌類の観察法を習得し、ブナ林に生息する菌類の多様性を体験します。そして夏休みに、北海道にある北限のブナ林で菌類の調査を行うことを目標にしています。

 普段あまり気に留めることのない菌類の暮らしを、野外で体験的に学習できること。それを通じて自然や生物に親しみ、私たち人間自身の暮らしを少し違う角度から眺められるようになること。そして何より、ゼミや宿泊実習を通じて、他のメンバーや先生、アシスタントの上級生・大学院生とざっくばらんに話しができること。これらが、このゼミの魅力だと思います。
 私自身も、大学2回生のとき、大学で知り合った先生に誘われて参加した観察会で菌類と出会い、その面白さの虜になりました。思いもよらない出来事や、ヒトやモノとの出会いが、人生の転機になったりします。今年のポケゼミでどんな菌類に出会い、ゼミがどんな展開になるのか。私も予想がつきませんし、それが楽しみともいえます。菌類の導きに身を任せつつも、参加学生と一緒に考え、作り上げていきたいと思っています。

大園 享司

生態学研究センター/准教授
大阪生まれの大阪育ち
趣味:山歩き・バレーボール・温泉など
生態系における菌類の働きと多様性に興味があります
http://www.ecology.kyoto-u.ac.jp/~tosono/Icon new window