森と木の生態を読み取る 2014年度

京都北山の台杉.これも不思議な樹形をしている.なんでこんな形になってしまったのか?
京都府立植物園温室内の奇想天外と名付けられた植物.昆布のようなこの植物は一体?
京都大学芦生研究林周辺のミズナラの集団枯死.大木を殺した犯人は?
大阪北摂地域のクヌギ林.台場クヌギと呼ばれる不思議な樹形は何のため?

 日本面積の約2/3は森林です.でも、森と言っても様々で、日本列島の環境条件の多様さや,人間による長い改変の歴史のために,多様な植生がきめ細かいモザイク状の景観をつくりだしています.その中に生活する植物達も,それぞれの自然環境や人為環境に対してさまざまな生活史戦略を発達させてきました.世界の生物多様性のホットスポットに日本が指定され,生物多様性の喪失の危険性の高い場所だと認識されているのも,このような日本の生物多様性のもととなった景観が,失われつつあることに起因しています.森林を優占する木の生育形態と環境への適応を観察することで、さまざまな森の違いとその成立過程を推察し、また、森林に依存する生物多様性や生態系サービスを上手に保全するにはどうしたら良いかを考察できます。
 そこで、このポケットセミナーでは,フィールドワークを重視して,京都近辺のいくつかの森林と植物園を訪れて,多様な森林が成立してきた背景とそこに生きる樹木の生活史を深く理解することを目的とします. 樹木がもつ形態や特徴がどんな生存戦略と結びついているのかを読み取る力をつけてくれることを願って,このセミナーを企画しました.山が好き,旅が好き,花が好きという皆さんに,さらに奥深い植物生態の世界を体験してもらいたいと思います.

神崎 護 北島 薫

【神崎 護 プロフィール】
亜高山帯から熱帯林まで,日本と東南アジア各地の森林を訪ねて,研究を続けてきました.現在は,熱帯の林業の持続性や,森林資源を活用した地域開発や地域保全に興味を持って研究を進めています.

【北島 薫 プロフィール】
学生時代は日本中の森林を訪ねて森を読むのが趣味でしたが、その後約30年ほど、アメリカを拠点として、熱帯林を中心に世界の森林で,いろいろな木本種の生態学的特性を調査研究してきました.このゼミで懐かしい日本の木々を皆さんと一緒に観察するのが楽しみです.