微細藻類の光合成とバイオテクノロジー:遺伝子操作による微細藻の機能改変を実体験する 2014年度

【ゼミの目的】
 光合成生物(Photosynthetic organism)は、太陽の光エネルギーを利用して二酸化炭素からいろんな有機物を生産します。農業では、デンプンや油脂を食糧として,あるいは樹木を建材等に利用します。一方、工業では、石炭や石油をエネルギー源や工業原料として利用します。つまり、人類の生活(生命)は光合成生物によって支えられているという訳です。この光合成を理解する生物として、微細藻類(葉緑体の祖先であるシアノバクテリアや単細胞の緑藻)が古くから用いられてきました。
 このゼミでは、緑藻クラミドモナス(和名はコナミドリムシ)を使って、光合成や生殖といった生物学の基礎から最新のバイオテクノロジー(遺伝子工学・バイオ燃料生産)について、実験をとおして理解することを目的としています。バイオテクノロジーの基本である分子生物学、遺伝子工学、さらに文献や遺伝子の情報を入手するために必要となるデータベースや遺伝子の解析手法についても実習で学びます。

【授業計画と内容】
 次の各項目について講義と実習(実験)をセットにして学習を進め、実験結果や知見について科学的討論をおこなう。各項目について、1~2週の授業と実習をおこなう。

1. 蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡を使い、微細藻の内部構造を観察し、多様性を理解する。
2. 光合成の基礎と測定方法を理解し、その重要性を理解する。
3. 緑藻クラミドモナスを単独培養し、無菌状態の培養法を理解し習得する。
4. 培養環境条件(光・CO2濃度・温度・栄養源の有無)の違いにより、細胞に蓄積する光合成産物(デンプン、油脂)の量が変動する様子を観察し、その理由を考える。
5. CO2の濃縮ならびに固定に関わる酵素や遺伝子の役割を理解する。
6. 遺伝子診断法(PCR法)により緑藻における雌雄の遺伝子型を判定するとともに、雌雄が交配する様子で表現型を判定し、遺伝子型と表現型の関連から、性ならびに生殖を理解する。
7. 遺伝子導入により光合成活性が変化した株の性質を理解し,光合成の改良について考える。
8. 各種データベースをインターネットで利用し、遺伝子情報や文献情報を調べて,最新のバイオテクノロジーについて理解を深める。

<受講を希望する人へ>
 これまで生物を学んでいなかった人でも、先端的なバイオテクノロジーに興味があれば、実験の基礎から体験してもらえるよう工夫しています。成績は、講義内容に関するレポートを提出してもらい評価します。出席重視です。質問があれば、教員宛(fukuzawa@lif.kyoto-u.ac.jp)にメールで連絡して下さい。なお、本ゼミは実験を含むので、白衣とスリッパを各自で持参して下さい。参考図書は講義中に紹介します。

福澤 秀哉 他

【福澤 秀哉 プロフィール】
生命科学研究科 教授
専門分野:分子細胞生物学、ゲノム科学、光合成
京大広報N671の「洛書」に記事あり(下記)。http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/issue/kouhou/documents/2011/671.pdfIcon new window
研究室ホームページ:
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/labs/molecule/Icon new window
生命科学研究科での紹介ページ:
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/j/modules/education/content0039.htmlIcon new window