地球の熱を測ってみよう 2006年度

噴湯する阿蘇中岳火口を見下ろしながら赤外線で温度を測る班。ガスマスクを着けると山登りは大変だが,火山ガスはなんともない(2005年9月)

■ポケゼミの概要
 本ポケゼミの目玉は,9月のはじめに阿蘇山の研究施設に泊り込んで,観測を実際にやってみることである。この観測旅行に先立ち,京都のキャンパスにおいて月に2回程度の事前セミナーを行っている。セミナーの定員は10名である。

■動機はなんでもいい
 セミナーに参加している学生の所属学部は,実に多彩である。動機も,将来どんな研究ができるか知りたい(理学部),理系の研究がどんなものか見てみたい(法学部),修学旅行で行った阿蘇山にもう一度行ってみたい(法学部),違う道を選んだが火山に興味がある(農学部・工学部)など様々である。京都大学が総合大学を自認するのであれば,多様な専門に向かいつつある学生に対して,我々が信念をもって取り組んでいる研究領域を紹介すべきと考えている。

■事前セミナー
 事前セミナーでは,観測旅行で実施する観測手法を紹介するが,それ以上に火山に浸りきってもらう。真っ赤な溶岩が滝のように流れる火山や火砕流に襲われた痛ましい災害の現場など,世界の火山噴火のビデオをふんだんに見て,火山の多様な姿を感じ取ってもらう。さらにそれぞれの火山のホームページにアクセスし,観測研究や災害・防災体制について簡単な報告をしてもらう。観測機材は貧弱なのに1980年代に噴火予知・防災に成功しているインドネシアの存在に驚き,20世紀最大級のセントヘレンズ火山の噴火に際して観測や情報伝達体制を整備して被害を最小限にとどめた米国の叡智に感心する一方で,噴火後の治山治水対策を十分に行わないために災害が頻発している怠慢(哲学?)の実態を知り,違和感を覚えたりする。些細なことではあるが,メールやプレゼンテーションソフトの使い方の講習も行う。

■観測旅行
 観測旅行は,学生にとって最も印象に残る経験である。ガスマスクとヘルメット使用の講習を受けた後,世界最大級のカルデラと火砕流が流れた原野を眺望し,激しく噴湯を続ける中岳火口を覗きながら観測を行う。観測という我々の問いかけに対して,データという形で正直に自然が応えてくれることに新鮮な驚きを覚える。宿泊する火山研究センターは,わが国で最初に設置された大学付属の火山観測施設である。学生は,重厚な雰囲気の中に当時の京都大学の並々ならぬ決意を感じ,焼肉パーティーで多様な専門領域に向かいつつある多くの友人を得るのである。

複数名で担当します。

理学研究科附属地球熱学研究施設

鍵山恒臣教授
専門分野:火山物理学

田中良和教授
専門分野:火山電磁気学

大倉敬宏助教授
専門分野:火山物理学