京の食を学び,体験する 2006年度

京の食文化を支える食材の交差点,錦市場

■テーマと目的
 794年に平安京が建都されて以来,京都は多くの文化を育んできました。とりわけ食文化は,日本の代表的な伝統のひとつとなっています。現在「文化遺産」としてもとらえられている京の伝統野菜は,それらの味や食感を活かした食材として京の食文化の成熟に不可欠のものとなっています。また,京都は海から離れた内陸の地の故に各地の産物を美味しく食する技,つまり食材の加工と調理の技術を編みだしてきました。これらは,現代日本の食文化の基盤となるとともに,諸外国でも受け入れられて来ています。
 また,最近では京都の伝統食品に免疫力の強化やリラックス効果を持つ成分が含まれ健康に良いことなども明らかになってきています。体に良い日本食の原点を見いだすことが出来ます。
本ポケットゼミでは,今日の京都の食文化を形成する複数の要素を現代科学の視点から学び,また物作りを体験することで理解を深めることを目的としています。あまりにも日常的事象であり思考することの少ない「食」の奥深さ,多面性を知ることにより生活の質を豊かにする知恵を見いだしてください。以下に具体的なゼミの内容を紹介します。

■食品の素材を学ぶ
 食品を構成する最も重要な要素は,素材です。京都の伝統野菜は京野菜とよばれ今やブランド化し,経済的な付加価値を高めています。食材としての京野菜を取り上げ,それらの特徴を歴史,栽培技術,利用法,経済などの面から考察します。

■食感を学ぶ
 食材は味覚のみならず歯ごたえ,喉ごしなどの食感に重要な役割を果たします。食の個人的嗜好性にも深く関わります。ここでは電子顕微鏡を用いた構造的観察により食品の構成要素としての食感の基となる食材の特性を学びます。

■食品の健康機能を学ぶ
 近年,食品には栄養素の供給源としての役割のみならず,積極的に人間の健康を保ち,元気にしてくれる働き,機能があることが分かってきました。日常の食生活の重要性が指摘されています。京都の伝統食品中に健康に良い成分が含まれていることが最近明らかになってきています。体に良い日本食の原点がここにあります。

■京の食を体験する
 京の食文化の形成には,食材の加工と調理の技術の発達が欠かせませんでした。ここでは実際的な物作りの現場を見学するとともに,自らトライアルすることにより理解を深めたいと考えています。食の幅と奥深さを知ることにより,参加者のその後の食生活が豊かなものになる切っ掛けになることを期待しています。

河田照雄教授

農学研究科
食品生物科学専攻
専門分野:食品分子機能学