野外生物学 2005年度

「林冠部での果実の観察・採集」

 自然生態系の理解は,野外で生物に接してその生態を十分に観察することから始まる。
 ポケットゼミ「野外生物学」は,教室内の講義や時間に制約のある学生実習だけでは体得することの難しい,自然条件下における生物を対象とした調査研究の進め方を,野外での調査活動を実践することによって体得することを目指す。
 野外に出る前に,まず,研究室で事前調査や討議をおこない,どのような研究課題に取り組み,どのような研究計画をたて,どのような方法を用いるのかを検討する。すでに研究に取り組んでいる大学院生との交流を通してアドバイスを受けるとともに,最近の研究論文等を「研究」し,必要な情報を集めることによって,研究計画の立て方や試料やデータの採り方を学び,各自が興味をもつ問題について研究計画などをたててみる。どのような生物の,どのような現象を,どこで,どのような方法で,どの程度の期間おこなうのか。極力,具体的に計画をたてる。また,少人数であることを生かして,各々の研究計画を互いに批判して,計画などの問題点を検討する訓練を積む。期間や,費用には制約があるが,毎週決められた時間ですまさなければならない実習とは違う調査計画を実行するところは集中講義によるポケットゼミの利点だと言える。さらに,野外調査に必要な道具の調達や安全対策の準備をおこなう。このような準備段階を経たあとで,いよいよ,実際に野外調査をおこなう。調査後は,野外で得た試料・データをもとに,その解析をおこない,一定の結論を得るという作業をおこなう。
 このように,このゼミでは,最終的に短期間の野外調査をおこなって,生物学・生態学の課題にとりくみ,事前調査や計画立案から調査準備・実行,データ解析から結果のまとめまでの,一通りの調査研究活動を体験することによって,野外生物学の研究の進め方を具体的,実践的に修得することを目指している。

市岡孝朗助教授

人間・環境学研究科
専門分野:生物環境動態論