鴨川で24時間観測をしよう! 2008年度

■フィールドワークにふれる
 京都大学は探検大学の異名をもつ。昔からさまざまな研究領域でフィールドワークを活発に進め、数々の国内・海外学術踏査を行ってきたからだ。その中には学生みずからの企画によるのもある。私の専門は水圏の化学研究であり、野外調査によく出かける。たとえ同じ場所であっても、訪れるそのときどきによって湖や河川はさまざまに異なる姿を見せてくれる。その変化に驚かされることも多い。水や大地に触れながら調査をしていると、まさに自然を科学しているのだと感じさせられる。このポケットゼミでは、そうしたフィールドワークの一端に触れ、野外で行う研究の楽しさと面白さ、そして難しさを実感してもらいたいと思っている。
 ゼミで何をやるか。最終的な目標は、大学の近くを流れる鴨川で24時間の水質連続観測を行って、水質は時間とともにどのように変化するのか、それはなぜか、を明らかにすることだ。人間や動植物の生活リズムに対応し、24時間のうちで水質は大きく変化するのかもしれない。あるいは、一日中全く同じかもしれない。貴船や大原の野や里、比叡や大文字の山々からの水を集め、京都市街を南北に流れる都市型河川の鴨川が、どのような水質の姿をもつのか、いかなる変容を見せるのか。実際に自分たちの手で測定し解析して、それをもとに考えたい。

■みずから学び、計画し、実行する
 どのような水質項目をはかるべきか、それはどのようにしてはかることができるのか、その水質の変化は何を意味するのか。まずはそれを考え学ばなくてはならない。
 鴨川のどこで、いつ調査するのか、どのような分担と体制で24時間観測を行い水質分析を進めるのか。次にはこのことについて考え、相談する。
 得られた結果をどのように纏め、どう解釈するのか。最後にはこれについて知恵を絞り、議論を重ね、結論を導き出す。   
 学生みずからが考え、学び、計画を練り、実行し、結果を解析する。ゼミではそうすることに努めたい。私はただ助言し支援する。そんな存在に徹したい。そうしてこそ、「自重自敬」、「自学自習」を重んじる京都大学の扉を開いた新進の徒の「学び」にふさわしい。

杉山雅人教授

地球環境学堂
(人間・環境学研究科,総合人間学部)
専門分野:水圏化学,河川や湖における物質循環過程の研究