無意識との出逢い-心理療法を通して 2008年度

 無意識と言っても、一般の人には何のことかはほとんど理解できないことでしょう。人間の心には、意識と無意識が存在するとある心理学の教科書には書かれていますが、そのことを読むと、いっそう何のことか分からなくなるでしょう。このポケットゼミでは、言葉の意味での無意識を考えるのではなく、心理療法という実践を通じて人間の心の働きを感じてもらう機会を与えることを目標としています。日々の生活で悩み、苦しんでいる人たちや何らかの症状に襲われている人たちの回復の過程を知ることで、人間の心にある無意識と意識の関係の不思議に気づかされます。
 また、自分の心を顧みることで、今まで自分が気づかなかった心理に気づかされることもあるでしょう。そんな簡単には自分の心理や、まして他者の心理を知ることはできませんが、このゼミで、臨床心理学での心理療法とはどのようなものなのかの知る手がかりになることを期待します。また、心理療法で用いる技法である描画や箱庭を実際に体験することにより、自分の心の動きを静かに見つめてみることも意味があると思われます。これらの講義や実践体験を3日間の集中講義を通して、受講者たちがじっくりと学び考えることを望みます。また3日間とは言え、私はこのポケットゼミが持つ守りと集中力で通常の授業では得ることができない講義を目指します。

角野善宏准教授

教育学研究科
専門分野:心理療法・精神医学