ファイナンスゼミナール 2008年度

 現在、経営者は「株主重視」という立場から経営を行っています。つまりその企業に投資している株主達の利益が最大になるように行動しなければなりません。株主はその企業の株式を購入する(=投資する)際に、期待しているリターンを持っています。経営者はこの株主の期待に応えねばならないのです。経営者から見れば、その株主の期待リターンが株式発行して得た資金の「資本コスト」となるわけです。
 この考えを基本にして、経営者は資金を効率的に配分して利益を得ることを考えなければなりません。複数のプロジェクトの候補の中からどのプロジェクトを選択すべきかと言い換えてもよいでしょう。「資本コスト」を頭にいれて、そのプロジェクトを評価する必要があるのです。さらに利益が得られた場合に、どのようにその利益を株主に分配すべきかを考えなければなりません。
 このようにコーポレートファイナンスは、「資金の流れ」を通じて、株主の立場から企業活動について考えます。テクニカルな用語を使えば、現在価値(Present Value)、割引キャッシュフロー法(Discounted Cash Flow Method)、リスクプレミアム、CAPM(Capital Asset Pricing Model)、MM理論、最適資本構成などをマスターする必要があります。
 こう書くと難しそうですが、もっと素朴に「どのように企業社会が動いているか?」「どの様な仕組みに基づいて企業活動が行われているか?」あるいは「企業の目的は何か?」と問われるかもしれません。そのような問いに体系的に理論的に答えるのが、この「コーポレートファイナンス」です。

江上雅彦准教授

経済学研究科
専門分野:ファイナンス工学