航空宇宙工学セミナー 2011年度

 このゼミは、3人の教員(青木,斧,琵琶)が分担して担当します。各教員担当分の内容紹介は以下の通りです。

 [青木] 航空宇宙工学における基礎科目(数学、物理学、各種力学)の重要性を理解してもらい、それらに興味をもってもらうことに主眼を置いたセミナーです。少人数のセミナーでしかできない学生との対話を通じて、興味をそそるように働きかけるよう努めています。

 平成22年度には、ゴルフボールの表面にはなぜ小さなくぼみがたくさん付いているかといった身近な疑問から出発して、空気力学のごく初歩的な説明をしました。また、スペースシャトル打ち上げ時の写真を見せて、再突入時の空気力学的加熱や高空における気体の希薄化効果、それに身近に見られる希薄化効果の例について説明しました。さらに、たまたま滞在していたマサチューセッツ工科大学の教員にも参加してもらい、アメリカでの教育内容や大学生活などの話題について(英語で)話し合いました。

 [斧] 宇宙開発において、宇宙機やその搭載機器の小型・軽量・低消費電力化は、経済性と多種多様なミッション遂行にとって重要です。そこで、マイクロ・ナノ工学の概要とともに、その宇宙工学との接点について紹介し、工学が対象とする幅広い分野において、実際は、基礎部分が共通である (融合している) ことを理解いただくよう努めています。

 平成22年度は、「マイクロ・ナノ材料やデバイスの基礎」とともに、「宇宙機の地球周回軌道航行」および「宇宙推進機」の物理と化学について説明し、宇宙工学に不可欠なマイクロ・ナノ工学の事例を紹介しました。その後、米国航空宇宙学会誌の英文解説記事 (Nanotubes lift hopes for space elevator) を読んでもらい、長年夢であった宇宙エレベータ (ロケットを用いない宇宙機の打ち上げ) が、マイクロ・ナノ工学の産物であるカーボンナノチューブによって、近い将来実現可能と考えられていることを理解いただきました。

 [琵琶] 航空宇宙工学および関連工学技術において、構造物の機能や安全性を確保するために、種々の荷重を受けた際の材料・構造物の変形や破壊特性を理解することが固体力学(材料力学、構造力学)の重要な役割となっています。そこで、固体力学の基礎概念や、航空宇宙技術発展の歴史の中での関連エピソードを学習することにしています。
平成22年度のゼミでは、航空工学発展に関するエピソードとして、1950年代に世界初のジェット旅客機として登場したデハビランド社製コメットに起きた連続墜落事故を取り上げ、この原因となった金属疲労や、亀裂の進展による破壊について、その後に科学的に究明された内容を考察した英語論文”Fatigue failure of the De Havilland Comet I”(P. A. Withey)を参加者に分担して読んでもらいながら、その理解に必要な専門的予備知識を担当教員から補足説明するというやり方でゼミを行いました。

青木 一生(あおき かずお)
機械理工学専攻/工学部物理工学科宇宙基礎工学コース、教授
・1950年生まれ、大阪府出身
・専門分野: 分子気体力学、非平衡気体力学

斧 高一(おの こういち)
航空宇宙工学専攻/工学部物理工学科宇宙基礎工学コース、教授
・1951年生まれ、福井県出身
・専門分野: 推進工学、電離気体工学

琵琶 志朗(びわ しろう)
マイクロエンジニアリング専攻/工学部物理工学科宇宙基礎工学コース、教授
・1967年生まれ,岡山県出身
・専門分野: 固体力学、材料力学

※いずれも工学研究科。