極限環境微生物 2011年度

 海洋熱水環境には、90℃以上で増殖する多様な超好熱菌という微生物が生息している。近年熱水環境は生命の起源の有力な候補として考えられているが、このような極限環境に生物はどのようにして生存、適応、進化してきたかは極めて興味深い。本授業ではまず、身近な食品を用いて、微生物という目に見えない生物を対象とする研究の仕方を学ぶ。さらに高温の熱水環境に生息する極限環境微生物について、観察、分離、培養してその実体の一端に触れ、講義や討論を交えて彼らの生存戦略について考察する。

1. 食品から多様な中温性微生物を分離して微生物の存在を知る
 持参した身近な食品サンプルを、有機物を含む寒天平板培地に塗抹して37℃で培養する。
分離した細菌がどのような種類なのか、次の2つの手法で明らかにする。細菌学の基本であるグラム染色による顕微鏡観察を行う。さらに分離した菌よりDNAを抽出して、細菌の分類指標である16S rRNA遺伝子をPCR増幅して、塩基配列を解析して細菌の種類を同定する。環境中に微生物が多数存在していることを、顕微鏡観察、培養法と遺伝子解析により実感し、目に見えない生物の研究手法を知る。

2. 超好熱菌の培養を通じて適応・進化を学ぶ
 鹿児島県指宿市山川砂むし温泉(泉温 約102℃)由来の熱水や砂から超好熱性従属栄養古細菌の分離・培養を行なう。こちらで用意した山川砂むし温泉の砂粒を、有機物を含む培地に入れ、沸騰水で培養する。
 超好熱菌の培養を行って高温環境に多様な好熱性微生物が適応し生息していることを体験する。また、分離される可能性がある超好熱菌が古細菌という真核生物や細菌とは異なるドメインに属することを勉強する。

左子 芳彦(教授)
【生年】DNAの二重螺旋構造が発見された年  
【出身地】大阪府堺市
【専門分野】海洋微生物学 超好熱菌
【趣味】旅行 ネイチャーフォトとカメラ談義 蝶 関西美食探訪
【メッセージ】大志をもって熱く楽しくセンスよく

吉田 天士(准教授)
【生年】1970年生まれ
【出身地】兵庫県神戸市
【専門分野】水圏微生物、水圏ウイルス
【趣味】海でのルアー釣り全般
【メッセージ】木を見て森を見ず?森を見て木を見ず?いろいろな視点を持って、物事を見てみましょう。

※いずれも農学研究科応用生物科学専攻海洋分子微生物学分野。