英語の鬼 2011年度

前期集中と有りますが、授業は毎週金曜日の18時15分から19時45分です。

カルト集団『幸運の青い谷』
国際交流センターでは、10年前から英語の運用能力をつけるための全学共通科目等を提供しています。特に熱心な学生さんたちは、休暇中も英語学習グループを作って勉強を続けており、既に財界・政界・学界で活躍している卒業生がいるなど、大げさに言えば派閥のような団体に成長しつつあります。僕の風貌やネタ好きな性格から、『カルト集団幸運の青い谷』(幸運の青い谷は青谷のあだ名のひとつです)などとも呼ばれ、ちょっとたけし軍団のようになって来ました。因みに団員は「工作員」と呼ばれています。但し、このカルト集団の目的はあくまでも英語の運用能力の向上です。

硬派が集う『英語の鬼』
この良き伝統を継承し、入学と同時に英語の学習習慣をつけるために、『英語の鬼』が始まりました。
こどもとは脳の働きが違う大人による第二言語習得の研究は、過去10年ほどで大きく進歩し、受験の英語力は、ネイティブの運用能力とはまったく異なることが明らかになりました。本セミナーでは最初に大人の英語学習がどういうものであり、実際にどのような学習が効果を上げるのかを説明し、そのフレームワークに則って学習を進めます。
ただし、毎週90分の講義だけで運用力が身に付くはずもありません。自学自習が非常に大切で、それなりの覚悟が必要という意味で、『英語の鬼』というベタなタイトルを付けました。登録前に面接を義務付け、「これまでの学習法とは完全に違う」「自分でも勉強しなかったら絶対に力は付かない」「欠席厳禁」とくり返して、ある種の洗脳活動を敢行します。それでも、金曜日の18時15分から19時45分という時間帯なのに、毎回定員の30名がきっちり埋まります。

口から血を吐くほどやる
読・書・聴・話をまんべんなく向上させるのが目的ですが、授業は聴・話、特に話が中心です。聴解はテスト形式ですが、さらに、目の前にいる生身の人間の英語の聴解も大切ですので、毎回僕が課題のデモンストレーションや経験談等で10分以上語ります。指示等は主に英語ですが、必要な時には日本語も使います。英語だけでは到底日本人には無理ですからね。毎週の宿題も充実しており、リスニングが2時間、30分の課題作文、そして1万語のリーディングがあります。これくらいやらないと力は付きませんし、1回生のうちならこれくらいの時間は取れるからです。
日本の大学生はなまくらで有名ですが、予想に反して毎年脱落者は少数です。「口から血を吐くほどやる」「足腰が立たなくなるほどやる」「許さない」がモットーの僕ですので、無断欠席者はどんどん切っていきます。そういう徹底した硬派アプローチが幸いしているようです。過去には居眠りをした学生に僕が怒りを爆発させて講義を途中でやめるなど、色々な事件が有りましたが、ほぼ全員が最後まで講義に出てくるのは、教える側として非常に嬉しく思います。

AB型が講義で炸裂
学生さんに書いてもらった授業の評価や感想は以下のようでした。
1. 英語でなされる英語の授業は初めてだった。
2. 英語の勉強法が良く分かった。
3. ディクテーションなどを通して、自分の英語力の無さが良く分かった。
4. 勉強の習慣がついた。
5. 先生は理系なのに高校の英語の先生よりできるので驚いた。
6. 京大の教員は一味違う。
7. しんどかった。
8. 厳し過ぎる。
11回の授業だけで英語力が大幅に伸びた人は非常に少ないはずです。しかし、英語を勉強する動機や機会を与える、また英語の勉強方法を教えるという所期の目的が達成されたのは1,2,3,4で良く分かります。特に1で分かるように、英語を多用した英語の授業は多くの学生さん達にとって、斬新でショッキングですらあったようです。5と6は僕についてのコメントですが、5は文献もすべて英語である理系の方が英語が必要だという事実を知らないためのリアクション、6は僕が変わり者だというだけですが、こう言われるのは愉快です。AB型が講義で炸裂していたのでしょうね。いずれにせよ、最後まで付いて来る人達は、各自それなりの物を当セミナーから得ると言ってよいでしょう。努力を続け続けるしぶとさは大切ですね。

人間は英語をしゃべるものである
最後に、セミナーは前期だけですが、勉強会は一年中やっていますので、僕のセミナーを取らなかった人も、覗いてみてください。ただし、週一回の勉強会に参加するだけでなく、自分でその数億倍の努力を重ねなければ英語の運用能力の獲得は到底不可能であるのは、言うまでもありません。今や国際社会では「人間は英語をしゃべるものである」が常識です。僕が学生だった35年前には「英語ができればなお良い」と言っていた企業も「英語ができなければ始まらない」とせっぱ詰まって来ました。そんな中、日本を代表する大学のひとつである京都大学の学生さんの危機感の薄さに、僕は強い危機感を感じずにはおれません。

と言う訳で、「工作員モトム!」

青谷 正妥(あおたにまさやす)

こういう講義をやる資格と言いますか、講師の自己紹介をしておきます。

講師の青谷正妥(あおたにまさやす)は1954年大阪市生まれ。大阪府立天王寺高等学校卒。学士が京都大学理学部(化学)、修士がニューヨーク市立大学(数学)、一つ目の博士号(Ph.D.;理学博士)がカリフォルニア大学バークレー校の数学、二つ目の博士号(Ed.D.;教育学博士。但し、正式な授与は学年が終わる2011年5月13日です)がテンプル大学(フィラデルフィアにあるペンシルバニア州の公立大学。大阪分校があります)の第二言語習得(要するに外国語学習・教育)です。1979年京都大学理学部大学院(当時は理学研究科と言う名前はありませんでした)1回生の途中で渡米し、20年間アメリカで生活。首都ワシントン、ニューヨーク、サンフランシスコ等東西海岸の主要都市で、メリーランド大学、プリンストン大学、ニューヨーク市立大学、カリフォルニア大学バークレー校、サンフランシスコ州立大学と5つの大学院に在籍。在米中、プリンストン大学、カリフォルニア大学、MITを含む4短大・11大学で教鞭を執り、化学・生物学・数学・統計学・物理学・天文学・日本語・経営学・電子工学・コンピューターの講義を担当。又十年間企業にて広報・研修等に従事、シリコンバレーでも勤務。化学より物理・数学へと二十年間で化学者から数学者に転身。最近は英語教育にも力を入れており、英語力に関しては、1978年から英語検定1級、現在はTOEIC・TOEFL CBT・TOEFL iBTが満点。*しかし*、「平均的京大教員の一億倍、アメリカ人の一億分の一」の英語力。国際交流センター准教授。著書に『英語勉強力』(DHC出版事業部)『超★理系留学術』(化学同人社)。
ホームページ http://aoitani.net/aotani-KKyoto.htmlIcon new window