きてみてさわって、有機化学が死ぬほど好き 2015年度

 有機化学が死ぬほど好きで、有機化学を勉強したくて京大へ来たみなさん。このゼミは、みなさんのような学生のために開講しました。ここでは、生きた有機化学の本当のおもしろさを伝えます。

 本ゼミでは、実際の有機化合物に多数ふれ、簡単なデモ実験を行いながら学ぶことで、有機化学の知識と考え方(理論、ロジック)を、身をもって体験、納得しながら理解します。毎回、簡単なデモや実物を前に、実際のモノを見て、さわって、においを嗅いで、時には味わいながら、物質の性質を支配する化学の原理や法則を理解していきます。終盤では、講義室でできる簡単な実験にも取り組み、実際の化学反応を実際に「目で見ながら」追跡してみます。暗記モノと思われがちな「化学」の本当のおもしろさは、高校までの化学ではあまり触れずにいた「なぜそうなるのか」という化学の考え方(理論、ロジック)の中にあります。これこそが、本当の「化学」であり、本当の学問なのです。しかし、考え方だけを教科書的に学んでも、なかなか納得できません。この美しい化学のロジックを、体で感じ、心の底から納得して理解するためには、実物に触れて学ぶ実体験と、それに伴う感動が、ぜひとも必要なのです。本ゼミでは、これを最も重視します。

 体験と並行して、テキストに沿ったオーソドックスな有機化学を基礎からきちんと積み上げ、徹底した演習と添削を行い、化学の知識や考え方を確実に定着させます。化学の知識や考え方は、数学や物理と同様、演習を通した反復学習がなければ、なかなか身につきません。そのプロセスを、演習問題のレポートとその添削を行うことでトレーニングし、化学の知識と考え方を徹底的に鍛え上げます。わずか半期ですが、真剣に取り組めば、見違えるようなレベルに達するでしょう。

 有機化学に関して、わからないこと、日頃から疑問を抱いていたこと、どうしても納得できないこと、もっと深く知りたいことなどを遠慮なくぶつけ合い、志を同じくする仲間との対話や議論を楽しみながら切磋琢磨する場を提供します。このゼミでは、化学に関して、何を尋ねても、何を発言しても構いません。恥ずかしくはありません。わからないことは人に聞けばよいし、知っていることは教えてあげればよいのです。志を同じくする仲間と一緒に考えれば、楽しさは倍増します。一人で悶々と陰気に悩むのはやめにして、仲間や教員との対話や議論を通して、陽気に、開放的に解決しましょう。それは、聞く方も聞かれる方も(教員にとってさえも)、ともに学び、刺激を与え合うことのできる互恵的で最良の方法です。機動性のある少人数のゼミだからこそできる、新しい学びの形態を、とことん活用して下さい。

 本ゼミには、「強制」という言葉がありません。したがって、試験もありません。すべての学びは、参加する学生自身および教員の自発的なやる気にもとづくものです。もっと知りたい、もっと深く理解したいという、みずからの知的好奇心や知的欲求に導かれ、学ばずにはいられない、気がついたら学んでいた、そんな不思議な学びの環境をつくります。理解したことがみずからの血となり肉となる喜びや達成感に勝るものはありません。ひとたびこれを味わったら、もう足抜けできないでしょう。強制でない成果主義、排他的でない競争、死ぬほど楽しい勉強等々、形容矛盾と言うなかれ。既成概念を打ち破り、与えられる学習からみずから学び取る真の学問へのパラダイムシフトを実現します。

 好きな有機化学を、死ぬほどかつ激しく勉強してみたい人、化学のためなら命を賭けてもいいと思う人、来れ。

平竹 潤

化学研究所 教授
農学研究科(応用生命科学専攻)所属
1960年 京都府生まれ
専門分野:有機化学、酵素化学、生物有機化学
研究視点:生物のもつ美しい機能美を化学の視点で解明したい。化学の力で生物の働き(=タンパク質の機能)を人為的に変えてみたい。これまで誰も作ったことがなく、天然にもない全く新しい機能性分子を設計し、みずからの手で合成したい。それを世の中の役に立てたい。