エレクトロニクスの箱庭 2015年度

 電子回路(エレクトロニクス)は時計、ラジオ、テレビ、携帯電話、パソコン、自動車など身の回りのあらゆる物に使われています。携帯電話やパソコンは最先端の電子回路技術の結集であることは言うまでもありませんね。一方、冷蔵庫や電車などは電子回路を使わず、電気回路だけで作ることもできますが、電子回路を使うことによって効率的なエネルギー利用が行われるようになり(パワーエレクトロニクス、インバータ)、数十年前のものに比べると格段の省エネルギーが実現されています。

 電子回路にはさまざまな科学技術やアイデアが凝縮されているのですが、技術が高度化し、外見も洗練されすぎてしまったため、日常生活でみなさんがその凄さを感じる機会がほとんどなくなってしまいました。このポケゼミでは、電子回路の基礎について学ぶと共に実際に自分で電子回路を製作し、また、それを動作させることで、電子回路の考え方やいろいろな工夫、電子回路を支える半導体物理などのサイエンスについても知識を広げてもらいたいと思っています。

 ポケゼミは、中学校で学んだオームの法則から出発します。中学レベルの電気回路も心底理解しようとするとなかなか奥深いです。電圧、電流という概念を簡単な電気回路の試作と測定を元に「体得」してもらいます。次に、電気をためる働きをもつコンデンサを加えた回路を試します。ここまで来ると、シラバスに書かれている言葉の意味が少し分かってくるようになります。「電子回路は一種の箱庭である。電気を水にたとえれば、電池は水車、配線は水路、コンデンサは池と見なすことができる。わずか数センチ角の基板上に、動きのあるすばらしい景観を形作ることができるのだ。」

 抵抗、コンデンサ、コイルだけでは電気回路で、電子回路にはなりません。ここにダイオードやトランジスタという電子部品(半導体デバイス、私の専門です!)が加わることで、多彩な機能が生まれ、電子回路となります。ダイオード、トランジスタについても、その動作原理を学びながら、それらを使用した簡単な回路を試作します。

 ポケゼミの最後の数回は、みなさんに自由製作をしてもらいます。それまでに学習した基本回路を組み合わせて、ちょっと気の利いた回路(キッチンタイマーなど)を作ってみるのも良いですし、回路図の読み方や回路の試作方法を身につけたので、インターネットや本に書かれている回路を参考に作製するのでも結構です。

 ゼミですから一方的に私が説明するのではなく、私から質問を投げかけ、みなさんの発言を得ながらゼミを進めてゆきます。そんなに難しいことを聞くわけではありませんから、文系、理系問わず、エレクトロニクスに対する興味や関心さえあれば、問題なくゼミを楽しめると思います。実際に、法学部、経済学部などの学生が過去にやり遂げてくれました。むしろ、専門科目でエレクトロニクスを勉強する機会のない文系の方にこそ受講して欲しい科目です。

ポケゼミのホームページ: http://semicon.kuee.kyoto-u.ac.jp/suda/Icon new window

須田 淳

工学研究科電子工学専攻、准教授
専門分野:半導体工学