生活空間再生学ゼミナール 2015年度

平成24~25年度のセミナーより

 多様な文化遺産を含む、膨大な数の建築群からなる生活空間の安全の確保は,地球環境問題が21世紀の課題となり、さらに、巨大地震の発生が想定される状況の中で、現代社会の重要かつ緊急の課題となっています。本セミナーは、地球環境の保全、地震災害の防止、文化遺産の継承を基本理念として、21世紀の重要な社会的資源である建築群の再生と活用について考えることを目的としています。生活空間には、歴史的経過のなかで形成された住まい方の文化とこれに応じて発達した空間性があり、それ自体が価値あるものですが、環境負荷の低減、火災や地震時の安全性、社会構造の変動への応答等、現代において新たに直面している課題に応えつつ、将来にむけてより質の高い生活空間を伝え、創っていく営みが必要とされています。

 セミナーは、建築学専攻の計画系・構造系・環境系のそれぞれの系から2名ずつ、計6名の教員が講師となり、多角的な視点から生活空間の再生と活用について議論を行います。平成27年度のセミナーでは、「町並み調査と保全計画」「京都の大空間構造と支えるしくみ」「健康で快適な住宅の温熱環境」「生活空間と音環境」「強くて安全な建物の造り方」「日本建築の歴史にみる建築の改修・再利用と文化財」等を主題とした講義を予定しています。第1回の講義時にオリエンテーションを行い、その後、各教員がそれぞれ2?3回の講義を担当します。写真の1つは、24年度の「大空間構造を支えるしくみ」の簡易模型による実験の様子で実はパスタで作っています。もうひとつの写真は25年度の「町並み調査」で西陣の町家を見学しているところです。講義室での開催を基本形式としますが、京都市内の各地の建築物等を見学し実際の生活空間を通じて議論を行うことも組み込みます。京都では、多数の重要な文化遺産、伝統的な建築物を含む木造の町並み、さらには、長い歴史のなかで形成された人と自然環境の関係性が、生活空間のなかに織り込まれており、その生活空間の安全を確保し、適切に守り、再生することはきわめて重要です。

 評価は、レポート、出席状況によりますが、積極的な意見・議論参加を重視していますので、生活空間の安全、保存・再生に関わる日頃の疑問や関心を積極的に述べて下さい。
 また、本セミナーを通じて得られる知見を、各自が、京都をはじめ国内外の都市や集落について、それぞれ独特の生活空間の特徴、安全の確保の課題、再生手法等について考察する際に役立ててほしいと考えています。

神吉 紀世子 他

工学研究科建築学専攻/教授
大阪出身
専門:都市計画・農村計画、等