航空宇宙工学セミナー 2015年度

【授業内容】
 このゼミは、3人の教員(青木、斧、琵琶)が分担して担当します。各教員担当分の内容紹介は以下の通りです。

[青木] 航空宇宙工学における基礎科目(数学、物理学、各種力学)の重要性を理解してもらい、それらに興味をもってもらうことに主眼を置いたセミナーです。少人数のセミナーでしかできない学生との対話を通じて、興味をそそるように働きかけるよう努めています。
 平成26年度には、ゴルフボールの表面にはなぜ小さなくぼみが付いているかといった身近な疑問から出発して、空気力学のごく初歩的な説明をしました。その過程で,マサチューセッツ工科大学で作られた流体力学,空気力学の簡単な実験の動画を活用しました。また、スペースシャトル打ち上げ時の写真を見せて、再突入時の空気力学的加熱や高空における気体の希薄化効果、それに身近に見られる希薄化効果の例について説明しました。

[斧] 宇宙開発において、宇宙機やその搭載機器の小型・軽量・低消費電力化は、経済性と多種多様なミッション遂行にとって重要です。そこで、マイクロ・ナノ工学の概要とともに、その宇宙工学との接点について紹介し、工学が対象とする幅広い分野において、実際は、基礎部分が共通である (融合している) ことを理解いただくよう努めています。
 平成26年度は、「マイクロ・ナノ材料やデバイスの基礎」とともに、「宇宙機の地球周回軌道航行」および「宇宙推進機」の物理と化学について説明し、宇宙工学に不可欠なマイクロ・ナノ工学の事例を紹介しました。その後、米国航空宇宙学会誌や米国電気・電子工学会誌の解説記事を読んでもらい、長年夢であった宇宙エレベータ (ロケットを用いない宇宙機の打ち上げ) やワンチップサテライト (手のひらサイズの人工衛星) が、マイクロ・ナノ工学の産物であるカーボンナノチューブや微小電子・機械デバイスによって、近い将来実現可能と考えられていることを理解いただきました。

[琵琶]  航空宇宙工学および関連工学技術において、構造物の機能や安全性を確保するために、材料・構造物の変形や破壊特性を理解することが重要となります。そこで、このような内容を扱う材料力学の基礎概念や、航空宇宙技術に関連するトピックを学習することにしています。講義とは異なり、さまざまな話題について参加学生に発言してもらうことを重視して進めています。
 平成26年度のゼミでは、初期の飛行機から複合材料構造の最新旅客機にいたるまでの構造・材料の軽量化の工夫や材料力学の基礎事項について学習した後、「アルミ缶と航空機与圧室はどちらが高い圧力に耐えられるか?」など、大学入学時の物理学の知識で取り組める簡単な問題について考察しました。また、構造物の安全を担う非破壊検査技術としての超音波計測についても紹介しました。

青木 一生 他

****** 各教員プロフィール ******
【青木一生(あおき かずお)】
・工学研究科機械理工学専攻/工学部物理工学科宇宙基礎工学コース
 教授
・1950年生まれ、大阪府出身
・専門分野:分子気体力学、非平衡気体力学

【斧 高一(おの こういち)】
・工学研究科航空宇宙工学専攻/工学部物理工学科宇宙基礎工学コース
 教授
・1951年生まれ、福井県出身
・専門分野:推進工学、電離気体工学

【琵琶志朗(びわ しろう)】
・工学研究科航空宇宙工学専攻/工学部物理工学科宇宙基礎工学コース
 教授
・1967年生まれ、岡山県出身
・専門分野:固体力学、材料力学