霊長類の進化とヒトのこれから 2015年度

 このポケゼミでは、指定図書のテキストを読み込んで自分で調べた関連事項をパワーポイントで発表してもらう毎週のゼミに加え、長年にわたって野生ニホンザルの生態の研究が行われてきた宮城県金華山島で3泊4日の合宿を行い、ニホンザルを含めた様々な動植物の生態を観察します。

 金華山島は2011年の東日本大震災で震源にもっとも近い陸地となったところです。このため2011年度の同島での実習は中止となりましたが、ディズニー財団等この島の価値を知る世界中からの支援が集まって急ピッチで山小屋の修理などが進み、翌2012年からは実習を再開しています。

 実習が行われる5月は、山の幸・海の幸も豊富で、東北地方の山々がもっともきれいな時期でもあります。ただその一方、島に向かう道すがら眺める風景は、復興がまだ道半ばであることを教えてくれ、島の斜面を30メートル近く駆け上がった津波の傷跡は今も残されています。震災が人の営みにおよぼした大きな被害と、それを乗り越えて何もなかったかのように存在し続けている動植物。ニホンザルの観察にとどまらず、多くのことをこの実習で感じ取ってください。

古市 剛史

京都大学霊長類研究所・教授。
専門は、ニホンザルやアフリカに生息する類人猿の行動と生態の研究と、ヒトの祖先の社会構造の進化の研究。