ポストゲノム科学 2015年度

【概要】
 ヒトのもつゲノム配列(≒すべてのDNA配列)が明らかになってから10年以上が経ち、その膨大なデータがもたらす可能性は、生物学のみならず社会的にも大きな注目を集めています。その背景のもと、私達の研究室ではヒトやその他の霊長類ゲノムデータベースを活用し、DNA配列の違いが生み出す、動物個体の行動や表現型の違いを調べています。これにより、遺伝子・環境・個体の相互作用によって、霊長類が進化してきたことが明らかになりつつあります。ポケットゼミ履修者の皆さんには、そんな魅力的な分子遺伝学的研究の一端を、ゼミ及び実験を通し、基礎から体験してもらいます。

【実施内容】
●ゼミ(京都) 7?10回(4?6月)
 まずは論文や書籍などを参考に、自分が興味のある遺伝子を見つけます。
・これまでの例)FOXP2:言語関連遺伝子、SHOX:身長関連遺伝子
その遺伝子について、これまでわかっている機能や遺伝子配列について、データベースをもとに調べてもらいます。
●実験(霊長類研究所:愛知) 3~4日間(夏休み中)
 ゼミで調べた遺伝子について、実際に実習者本人(口腔細胞)やサルからDNAを抽出し、塩基配列を解析します。得られた結果から、個人差や種間差を抽出し、表現型の推定や進化的意義を考察しましょう。そして最後に、自分が実施した内容に関して、プレゼンテーションしてもらいます。また最終日には、隣接する日本モンキーセンターにも訪問し、様々な霊長類を実際に見ることで、その多様性や進化を感じ取って頂きたいと思っています。

【ねらい】
 これらの過程で、分子遺伝学的研究手法はもちろんですが、科学論文の調べ方からプレゼンテーションに至るまで、研究活動一般に必要なスキルや考え方をひと通り学習することが出来るでしょう。実験結果の出来不出来は問いません。研究には思い通りに行かないこともあるということを含めて、学んでほしいと思っています。
 また、生物学の知識に乏しくとも構いません。そういう人は案外、目の付け所が面白かったりするものです。ヒトの進化や病気と遺伝子の関係に興味がある方、歓迎いたします。

今井 啓雄 他