くすりの化学 2015年度

解熱鎮痛薬の化学合成
吉田キャンパス某所にて「くすりのタネ」の採取
小野薬品工業株式会社への見学

 生命の営みは、高度に制御された化学反応の連続のうえに成り立っているといっても過言ではありません。この化学反応の平衡が一部崩れ、細胞や臓器レベルでの異常が表面化するのが病気の状態であるといえます。その秩序を元に戻す手助けをするのが「くすり」であり、ひとが様々な病を克服し健やかな生活を送るための必需品です。くすり(医薬品)のほとんどは有機化合物です。そのため、くすりを探す・創る、知る、正しく使うためには、有機化学はとても重要な学問です。
 このゼミでは、医薬品が創製されるまでの探索から設計・合成までの過程を学びながら、「くすりの化学」の面白さと難しさを探ります。すなわち、現在利用されている医薬品の歴史を理解しながら、以下の点などについて考えていきます。
・なぜ有機化合物が医薬品として機能するのか?
・なぜ副作用を抑えるのが難しいのか?
・どのようにして医薬品の種を探すのか?
・どのようにして医薬品を合成するのか?
・目的の合成が成功したかどうかをどのように判断するのか?

 本ゼミでは、有機化学領域のみならず、くすりの発見や体内での作用メカニズムなど生命科学までに至る幅広い学問領域における「化学」について入門的な観点から解説します。また座学にて学習した内容を、化学実験、フィールドワーク、関連施設の見学などを通じて体験することにより、医薬品と化学のつながりを身近に感じてほしいと思います。このゼミを受けるために高校での化学の履修経験や特別な予備知識は必要としません。有機化学や薬学に関心を持っている学生であれば誰でも歓迎します。また、所属学部が理系/文系であることも問いません。有機化学実験の安全性と危険性についての理解を深めるため、ゼミの最初に化学実験に対する安全教育を行います。
 このゼミに参加して学ぶことで、くすりと化学がどのように結びついているかを知り、新しい医薬品を創製するためにはどのような工夫と努力が必要であるか考えてもらいたいと思います。また、実験や演習を通して、今後の学生生活に役立つような科学的観察力や思考力を養ってもらえればとも考えています。

今年度行う予定の題材は以下のとおりです。
1. 解熱鎮痛薬の化学:メーカーによる成分の違いの理解と、解熱鎮痛剤の合成実験
2. 麻薬の化学:麻薬の成分である有機化合物の性質と、体への作用の仕方の理解
3. くすりのタネの化学:吉田構内に潜んでいる医薬品シーズの探索
4. 麻酔の化学:麻酔薬として使われる医薬品の合成と評価
5. 近郊の製薬企業/研究所等の見学

服部 明 他

****** 各教員プロフィール ******
藤井 信孝(教授)
 1950年山口県生まれ 専門は医薬品化学、ペプチド・蛋白質化学
竹本 佳司(教授)
 1960年大阪府生まれ 専門は有機合成化学、有機金属化学
高須 清誠(教授)
 1970年京都府生まれ 専門は有機合成化学、生物有機化学
大野 浩章(教授)
 1973年北海道生まれ、専門は有機合成化学、有機金属化学
服部 明(准教授)
 1968年愛知県生まれ 専門は生化学
山田 健一(准教授)
 1973年東京都生まれ 専門は有機合成化学、有機金属化学
大石 真也(講師)
 1976年静岡県生まれ 専門は医薬品化学
塚野 千尋(講師)
 1978年神奈川県生まれ 専門は有機化学、天然物合成
西村 慎一(助教)
 1976年広島県生まれ 専門は天然物化学
山岡 庸介(助教)
 1976年福岡県生まれ 専門は有機合成化学
小林 祐輔(助教)
 1979年福岡県生まれ 専門は有機化学
石川 文洋(助教)
 1981年愛知県生まれ 専門は生物有機化学