微細藻類の光合成とバイオテクノロジー: コナミドリムシの環境応答とバイオ燃料生産 2015年度

【授業の概要・目的】
 光合成生物(Photosynthetic organism)は、太陽の光エネルギーを利用して二酸化炭素からいろんな有機物を生産します。農業では、デンプンや油脂は食糧に、また樹木は建材等に利用します。一方、工業では、石炭や石油をエネルギー源や工業原料として利用します。つまり、我々の生活(生命)は光合成生物によって全面的に支えられています。この光合成を理解する研究材料として、微細藻類(葉緑体の祖先といわれるシアノバクテリアや単細胞の緑藻)が古くから用いられてきました。このゼミでは、緑藻の一種であるクラミドモナス(和名はコナミドリムシ)を使って、光合成や生殖といった生物学の基礎から最新のバイオテクノロジー(遺伝子工学・バイオ燃料生産)について、実験を通して理解を深めることを目的としています。バイオテクノロジーの基本である分子生物学・遺伝子工学、さらに文献や遺伝子の情報を入手するために必要となる文献データベースやゲノムデータベースを遺伝子の解析手法についても実習しす。これまで生物を学んでいなかった人でも、先端的なバイオテクノロジーに興味があれば、実験の基礎から体験してもらえるように工夫しています。

【授業計画と内容】
 次の各項目について、講義と実習をセットにして学習を進め、実験結果について科学的討論をします。各項目は、1回~2回の授業と実習で進めます。
1. 微細藻の内部構造を、蛍光顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡で観察し、藻の多様性を理解する。
2. 光合成活性を測定する方法を理解し、生物種による光合成能の違いを理解する。
3. 緑藻クラミドモナスを無菌培養法を理解し習得する。
4. 培養環境条件(光・CO2濃度・温度・栄養源の有無)の違いにより、細胞に蓄積する光合成産物(デンプン、油脂)の量が変動する様子を観察し、その理由を考える。
5. CO2のセンシングや細胞内への濃縮・固定に関わるタンパク質の役割を理解する。
6. 遺伝子診断法(PCR法)により緑藻における雌雄の遺伝子型を判定する。雌雄配偶子が凝集・接合する様子を観察し、その様子から雌雄の表現型を判定する。そして、遺伝子型と表現型の関連から、性ならびに生殖を理解する。
7. 遺伝子導入により光合成活性や薬剤耐性が変化した株の性質を理解し、光合成の改良や遺伝子工学について考える。
8. 各種データベースをインターネットで利用し、遺伝子情報や文献情報を調べて,最新のバイオテクノロジーについて理解を深める。

【成績評価の方法・基準】
 毎回の講義中に課題を出しますから、その課題について次の講義時にレポートを提出してもらい、これを評価の材料とします。出席重視です。

【その他】
 質問があれば,教員宛(fukuzawa@lif.kyoto-u.ac.jp)にメールで連絡をして下さい(ただし、「@」は小文字の「@」にしてから送信して下さい)。

 京都大学に入学した諸君には「(受験)勉強する」から、「学問をする(身につける)」へと、方向転換してもらいたいと考えます。このゼミは、科学研究の現場を体験したいと考える人を対象にしています。座学ではなく実際の研究現場で分子細胞生物学やバイオテクノロジーの様子を知ることができるでしょう。また、大学院で学ぶ先輩学生たちから得るところも多いでしょう。
 本ゼミでは毎回、最初の20分程度で、実験の目的・原理・注意点を講義します。そして講義終了直後から実験を開始します。遅刻すると、実験の意味が理解できないまま作業を行うことになってしまいます。
 実験には、白衣とスリッパが必要なので持参すること。また、「学生教育研究災害傷害保険」等の傷害保険に加入していることが受講の条件です。
 オフィスアワーは設定していませんので、授業内容について質問があれば、授業時間以外でも担当教員宛(fukuzawa@lif.kyoto-u.ac.jp)にメールを送って質問して下さい(@は小文字の@に変えて送信して下さい)。面談やメールでアドバイスすることが可能です。なお、参考図書は講義中に紹介します。

福澤 秀哉

所  属:生命科学研究科 微生物細胞機構学分野
出身地 :京都
専門分野:分子細胞生物学
趣  味:古典音楽の鑑賞・演奏、和食
ラボHP : http://www.molecule.lif.kyoto-u.ac.jp/Icon new window
研究科HP: http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/j/?post_type=labos&p=158Icon new window
紹介文 :http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/issue/kouhou/documents/2011/671.pdfIcon new window