初修外国語の履修にあたって

なぜ初修外国語を学ぶのか

多極的世界観の構築

なぜ, 英語のほかに, 外国語を学ぶ必要があるのでしょうか。それは, ずばり, グローバル社会だからです。グローバル社会といわれる現在, 世界のさまざまな言語文化地域の人々と出会い, 相互に理解する必要性が, ますます大きくなっています。英語ができさえすれば十分, と思うかもしれません。けれど, たとえば日本の基盤はあくまでも日本語であり, 日本語のなかで人々が暮らし, 考え, 行動し, 文化社会を構築しており, 英語ではわからないことが多々あります。それは他の言語地域でも同じで, その言語を知ってはじめて見えてくるものが無限にあります。言語を学習するとはつまり,単に技能を身につけるだけでなく,それらの言語を話している人々の文化や価値観を学ぶことでもあります。そうして, ①英語に集約されない多極的・多元的世界の一端を知ること, ②それをてがかりに, 多様なものの見方や考え方にたいする感受性や想像力を養うこと, そのうえで, ③異文化の人々との出会いにおいて, そのバックグラウンドにわたしたちとは異なった文化社会があることを前提として対応できる力を養うこと, などが, 初修外国語を学ぶ意義であり, 現代社会を生きるうえで必要な教養です。

対話と自律学習による学術的言語技能の涵養

京都大学における初修外国語教育は,「聞く」「話す」「読む」「書く」の一般的言語運用能力を養うだけでなく,より発展的に, 講義の理解,口頭発表,学術文献の読解,論文執筆など,学問の場にいる者にふさわしい学術的言語能力の涵養をも目標にして行われます。また, 効果的に外国語に親しむためには,授業の場だけでなく,授業時間外での自律した自学自習も大切です。

以上の方針は, 「対話を根幹として自学自習を促し」,「教養ゆたかで」「地球社会の調和ある共存に寄与する」人材育成を旨とする, 京都大学の基本理念 に沿うものです。

言語の難易度と履修選択

どの外国語が修得しやすいかと聞きたくなる人がいるかもしれませんが,個別言語の修得の難易度を測る一般的な尺度は存在しません。性,数,格,時制,法など,特定の文法事項だけを取り出せば,〇〇語は△△語に比べて複雑ないしは簡単であると直観的に思うかもしれません。語の作り方[語形成]や語彙などもそうです。発音と文字表記や,文体と敬語なども同様です。しかし,文法全体や言語運用全体から見れば,どの言語が複雑であるか簡単であるかを一般的な形で論じることはできません。したがって,どの外国語を履修するとよいかをそのような観点から決めることはあまり意味はありませんので,その他の事項を考慮して判断してください。

学部ごとの単位規定と指定外国語

大学を卒業するためには,一定の範囲の科目で一定数の単位を修得することが必要です。その内訳は, 学部や学科によって異なります。学部や学科で指定されていない科目を履修して単位を修得しても,卒業に必要な単位として算入できません。選択肢および必要単位数を「履修の手引き」で良く確認してください。

履修できる初修外国語の数については,とくに規定はありません。2つでも3つでも可能です。ただし, 初級は週2クラスがセットになっており(詳しくは下の授業説明を見て下さい),例えば英語と中国語を履修するとすれば,1回生で英語を2クラスと中国語の初級を2クラスの計4つのクラスを履修することになります。全学共通科目で履修するのは外国語だけではありませんので,バランスを考えてください。大学人の教養として,異なる系列の言語をできるだけたくさん勉強したいという気持ちがあれば素晴らしいことですが,あくまでも実行可能な範囲に抑えてください。

授業クラスの編成とクラス指定科目

初修外国語には,クラス指定言語(ドイツ語,フランス語,中国語,スペイン語)と, そうでない言語(ロシア語,イタリア語,朝鮮語,アラビア語)があります。このサイトの「科目編成」の項目および, シラバスで確認してください。自分の履修クラスについては4月2日(木)以降にKULASISで確認できます。

1回生の授業:初級(Ⅰ)

初級の授業は,「文法」と「演習」各週一回の授業がセットになっています。「文法」では各言語の構造の基本を, 「演習」では実際の運用を学ぶというように, 相互に補い合う形になっています。それにより, 言語のいわば土台部分を構造と運用の両面から学び, 学術的言語技能の基礎となる力を養うことを目標としています。発音や文法や基本的な言い回しに, それぞれの文化を垣間見ることができます。
この標準的なコースの他に,インテンシヴ・コースや会話クラスがある外国語もあります。「科目編成」の項目および, シラバスで確認してください。

2回生以上の授業:中級(Ⅱ)・上級(Ⅲ)

中級では,「精読」「作文」「会話」「聴き取り」などを通じてさらに高度の言語能力を身につけると同時に,その言語共同体の文化や思考方法を理解するための授業が行われます。中級の授業は,初級の授業で身につけた基礎的言語能力を充実させ,学術的言語技能の涵養に資することを目標としています。

上級の授業では,高度な内容の文章を読むこと,書くこと,口頭で発表することなどが行われます。上級では,中級で身につけた言語能力をさらに発展させ,より高度な学術的言語技能の修得を目標としています。